企業間ビジネスでは、商品の販売と同時に代金を受け取る現金取引以外にも、掛取引や手形取引といった売上債権を用いた取引が行われることが多くあります。
そのため、ビジネスにおいては売上債権についての正しい知識が必要です。
こちらの記事では、売上債権の種類や管理方法について解説します。掛取引では現金化が遅くなることから、企業の資金繰りに悪影響を与えてしまうケースもあります。売上債権の回収を早める方法についても解説しますので、参考にしてみてください。
監修者プロフィール
税理士法人 浅野会計事務所
税理士法人浅野会計事務所は、愛知県清須市にあり、創業40年以上、経営・金融・税務・会計・労務のスペシャリストとして各種サポートを行っています。代表の浅野芳郎をはじめ、税理士4名、行政書士1名、社会保険労務士1名ほかファイナンシャルプランナー、宅建資格の資格保持者などもおり、長く経営するためのサポート体制を整えています。
売上債権とは
企業における取引には、掛取引や手形取引があります。
商品の販売やサービスの提供をした後には対価を受け取りますが、掛取引や手形取引では提供と同時に現金を受け取るのではなく、後日支払うことが約束されます。
売上債権とは、このような取引において発生した売上にかかる債権のことを指します。
わたしたちが普段お店などで買い物をするときは、商品の購入と同時に支払いをするのが一般的です。
しかし、即時に現金などで支払いをするやり取りは、企業間ビジネスにおいては効率が悪いという一面があります。
商品の販売やサービスの提供といった取引をするたびに現金の受け渡しをする場合、常に現金を保有していなければならず、取引するたびに請求書や領収書の発行が必要になり、手間がかかることに加えて作業が煩雑になることでミスも起こりやすいでしょう。
1ヶ月分などまとめて請求し、期日までに支払いしてもらうようにすることで、事務作業などの手間を減らしてスムーズな企業運営ができます。
売上債権を円滑に回収することは、健全な経営を行ううえで非常に重要なことです。
そのため、もしも回収が遅れたり、実際に資金を手に入れるまでの期間が長期化したりすれば、企業の資金繰りは厳しくなります。
売上債権はきちんと管理し、回収することが重要です。
売上債権は3種類
売上債権には大きく分けて売掛金、約束手形(受取手形)、電子債権の3種類があります。
それぞれに違いがあるため、こちらでは各売上債権の特徴について解説します。
売掛金
掛取引において発生する、商品などを提供した側が持つ債権のことです。
掛取引では、商品の販売やサービスの提供によってもらえる対価をその都度現金で受け取るのではなく、一定期間まとめて請求し、期日までに支払いをしてもらうので、対価は後払いということです。
売掛金とは商品などの提供は済んでいるけれど、まだ回収していない代金を将来的に受け取れる権利を指します。売掛金を用いた信用取引をすることで、取引機会の拡大につながり、取引における作業の煩雑さを軽減できます。
取引のたびに現金を支払い、領収書を発行するとなると時間も手間もかかりますが、一定期間の売上をまとめて請求・支払いすることで双方の作業が簡潔化されるのです。ただし、資金回収までに時間がかかったり、取引先の倒産など売掛金の未回収リスクが伴ったりとデメリットもあります。
手形のように証書の発行があるわけではないため、取引先との信頼関係が成り立っていることが必要です。新規の取引先の場合は信用調査などを行い、取引先の経営状況や財務状況によって信用限度額を設定することもあります。
仕訳においては、商品やサービスを提供したタイミングで売上に計上し、支払期日に入金を確認してから売掛金の入金消込を行います。売掛金と似た勘定科目に「未収金」がありますが、未収金は営業活動以外の取引で生じた代金の中でまだ回収が済んでいないものを指します。
たとえば、企業が所有する車や備品などの固定資産を売却した際に、後で受け取れる代金などが該当します。売掛金は掛取引で発生する営業活動上の未収入金であるため、両者は違うものです。
約束手形(受取手形)
約束手形は、商品やサービスを提供後に受け取るもので、将来の期日に代金を支払ってもらえることを約束された有価証券です。取引先の企業が金融機関から発行を受けた約束手形に必要事項を記載・押印することで、代金決済手段として利用できます。指定された期日になったら、受取人は金融機関に手形を取り立てに出し、現金に換えられます。
約束手形は売掛金と同じく後払いによって対価を受け取りますが、売掛金よりも支払期日が長いのが一般的です。そのため、振出人にとってはお金を準備するための期間が長くなり、余裕ができるというメリットがありますが、受取人にとっては売上の資金化が遅れてしまうという面があります。
約束手形を発行するには、まずは取引のある金融機関で当座預金を開設することが必要です。当座預金とは、約束手形の入金や引き落としといった業務を金融機関にしてもらうための専用預金口座です。
当座預金を開設するには金融機関に対する信用が必要であり、信用がなければ契約も、約束手形の発行もできません。約束手形を発行する企業は金融機関からの信用があるといえますが、不渡りが起こることもあります。
不渡りとは、手形受取人が支払いを受けることができない状態のことで、たとえば受取人が手形決済期日に金融機関に手形を取り立てに出しても、振出人の口座に残高がなくて現金化ができない場合などが該当します。
また、約束手形は裏面に署名と押印をして第三者に譲渡し、第三者への支払い手段として利用することも可能です。これを手形の裏書と呼びます。裏書手形を受け取った方がさらに裏書をして、また別の第三者に譲渡することもできるため、手形が複数人の手を渡ることもあります。
電子債権
中小企業をはじめとする事業者の資金調達をスムーズに、そして安全に行うため、2008年12月に電子記録債権法が施行されました。
債権者と債務者の請求によって、電子債権記録機関が記録原簿に記録することで、電子債権が発生します。金融機関を介して債務者の口座から債権者の口座に送金が行われた場合、電子債権は消滅します。
また、元の債権者が電子債権を譲り渡す場合、渡す側ともらう側の請求によって電子債権記録機関が記録を行うことで、電子債権の譲渡が可能です。
電子債権は、売掛金や手形のデメリットを改善した新しい仕組みの金銭債権です。単に売掛金や手形を電子化したというわけではありません。売掛金においては、債権の存在は誰のものであるかの確認をするためのコストや手間が必要であり、二重譲渡のリスクもあります。紙媒体である手形は、保管コストや紛失や盗難のリスクなどの問題があり、手形の利用が減少してきているのが現状です。
さらに、電子債権は売掛金や手形ではできない分割利用ができるのも特徴です。
必要なぶんを現金化、あるいは譲渡するなどの利用方法もあります。
電子債権を利用するうえでは会計処理の変更が必要となる、利用手数料が発生するなどのデメリットもありますが、それらをカバーする使い勝手のよさがメリットといえます。
電子債権の取引率は高いといえる状況ではなく、今後の普及が期待されています。
売上債権を管理する方法
売上債権の管理とは、売掛金の管理業務のことを指します。
売掛金の回収予定を把握して管理することは、売掛金をきちんと回収するために役立ちます。つまり売上債権の管理は企業の資金繰りをスムーズにするため、健全な経営において非常に重要といえるのです。
こちらでは、売上債権管理の業務フローをご紹介します。
取引金額の限度額を決める
取引先の信用を調査して取引できると判断した場合は、経営状況や支払能力に応じて取引金額の上限を設定します。取引可能な金額をあらかじめ決めておくことで、売掛金の未回収リスクを低くできるのです。
信用調査会社のデータに基づいて決定したり、独自に調査したりして、安全な取引ができるようにします。
初めて取引する企業はもちろんのこと、既に取引している企業の情報収集も定期的に行い、経営状況を常にチェックしておくことが必要です。取引開始時は信用が高い場合でも、その後の経営によって財務状況が悪化する場合もあるからです。
請求書を発行する
商品の販売やサービスの提供をしたら、代金の支払いを求めるために請求書を発行します。
請求書の形式に法律上の決まりはありませんが、記載するべき事項や記載しておくことでトラブルを避けられる項目もあります。
基本的に記載が必要なのは、請求日、請求書作成者の名称などの情報、取引先の名称、取引した年月日、商品やサービスの内容、取引金額、支払期日、振込先です。
請求日、つまり請求書を発行する日付のルールや、支払期日などは、取引先と確認しておくとスムーズでしょう。また、振込手数料はどちらが負担するのか、消費税の扱いなどについても事前に確認しておくことで、トラブルを防げます。
請求書を作成したら、取引先に送付します。郵送、FAX、PDF形式でメールするといった方法で送付するのが一般的です。いずれかの方法で送付するか、PDF形式でメール送信して取引先が確認した後、郵送で原本を送るケースもあります。
債権管理表を作成して入金確認をする
請求書を送付したからといって、確実に期日までに入金してもらえるとは言い切れません。
入金されているか、期日は守られているかなどを社内で確認する作業が必要です。
これは債権管理業務の中でもとくに大切な業務です。債権管理表を作成して、売掛金の入金確認や回収の管理などを行います。「売掛金残高一覧表」といわれる取引先別に売掛金残高を確認できる表や、月ごとの時間軸で管理された「売掛金年齢表」を使って管理します。
売掛金の確実な回収に向けて、請求額と入金額の照合、売掛金と入金額の紐づけや消込の作業、支払日の管理などを行います。金額の照合などの作業は複雑で、件数が多ければより一層記入漏れやミスが生じやすくなるので注意が必要です。
記入漏れ、請求漏れ、回収遅れ、回収漏れなどは企業の資金繰り悪化の原因になりかねません。お金の動きを把握し、早めの対策ができるようにするためにも、債権管理表などを用いた支払確認が重要です。
管理を徹底することで、売掛金の発生から入金までの期間が長い取引もしっかりと把握できます。取引先と交渉するなどして、売掛金の支払条件を見直すきっかけにもなるでしょう。また、入金の状況を確認し、取引の限度額を調整することもあります。
代金回収ルールを見直す
取引先によって「月末締めの翌月末払い」「月末締めの翌月10日払い」など、締め日・支払日がバラバラであることも多いため、取引先別に代金の回収ルールを決め、状況に応じて見直して管理していく必要があります。
集金係や担当者の訪問による回収から、振込による回収に変更するのもひとつの方法です。
回収の担当者、責任者、管理者を決めて役割を明確にするなど、ルールを設ける必要があります。
催促状や督促状の送付
きちんと債権管理をしていても、取引先が支払期日までに入金してくれないこともあります。
売掛金が支払期日に入金されない場合や、入金額と請求額に違いがある場合は、取引先の担当者に確認が必要です。入金忘れや金額の誤りなどのケースでは、正しい金額を伝えて入金を依頼しましょう。
ただし取引先の担当者に確認したにもかかわらず入金がない場合は、請求書の再発行や催促状の送付を行う必要があります。それでも入金されない場合は、より強い意味合いである督促状の発行をして入金を促します。
督促状は丁寧かつ事務的な文言を用いて書くことがポイントです。支払いが滞っていることを責めるのでなく、あくまでも支払いを促すことが目的であるため、取引先との関係が悪化しないよう記載する内容や言葉には注意しましょう。
どの取引についての支払いを要求しているのか、金額や支払期日などについても記載しましょう。督促状を送付しても支払われない場合は法的措置をとる可能性がある旨を記載しておくこともあります。
売上債権回転率とは
売上高と売上債権から算出される数値で、売上の回収が順調に行われているかを知るための指標です。
売上高に対して、売掛金や受取手形といった売上債権が一定期間のうちにどの程度利用されたのかを示します。
売上債権回転率が高ければ高いほど、売上から代金回収までの期間が短く、円滑に売上債権を回収できていることを表すのです。
売上債権回転率が低くなる原因
業態、業種、企業規模などによって売上債権回転率は変わってきます。
中でも宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、小売業などは高めです。一方で製造業や卸売業、情報通信業、運輸業、郵便業などは低めの傾向があります。
企業規模によっても違うため一概には言えませんが、業態の平均値を把握した上で、自社の売上債権回転率が低いかどうかチェックしましょう。業態によって掛取引と現金取引の比率が異なり、現金取引の割合が高ければ売上債権回転率は高くなりやすいです。
同じ業態の平均的な数値よりも売上債権回転率が低い場合、考えられる原因として売掛金の回収サイトが長いことが挙げられます。売掛金の回収サイトとは、商品やサービスの提供から代金を受け取るまでの期間のことです。
回収サイトが長い売掛金を多く保有していると、それだけのタイムラグに対応する資金が必要になります。もともと決めた代金の回収条件の期間が長い場合もありますが、期日通りに支払われていない売上債権が存在するケースも考えられます。
債権を管理していないと、支払いの遅延が見逃されてしまう可能性もあるのです。支払いが期日通り行われていないと売上債権回転率は低くなってしまいます。利益は出ているにもかかわらず、代金が回収されていない状態は、企業にとってあまりよい状態とは言えません。
売上債権回転率の計算方法
損益計算書の売上高を、貸借対照表の売上債権で割って算出します(売上高÷売上債権)。
売上債権回転率を計算する場合、売掛金や受取手形、手形を期日よりも早期に現金化した割引手形も含めます。また、売上債権における貸倒引当金がある場合は、マイナスして算出するのが一般的です。
売上債権回転率は「回転」という単位を使います。たとえば売上債権回転率が年に6回転である場合、1年に6回の支払いが予定されていることを表します。つまり売掛金などの売上債権が発生してから現金化するまでに、約2ヶ月が必要です。
売上債権回転率が年に4回転の場合、1年に4回の支払いが予定されているのですから、売上債権を現金で入手するまでには約3ヶ月必要となり、1つめの例である6回転よりも回転率が悪い、現金化までのスピードが遅いということになります。
売上債権回転期間とは
売上債権を何日、または何ヶ月保有したら回収できるのかを示す指標です。
数値が小さい、すなわち日数や月数が短いほど売上債権の現金化までの期間が短く、売上債権を効率的に利用していることを表します。
売上債権回転期間は、資金繰りを考える上で重要な役割を持つ指標です。宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、小売業などは売上債権回転期間が短めです。一方で製造業や卸売業、情報通信業、運輸業などは長い傾向にあります。売上の相手が法人であり、手形や売掛金の利用が多い業種は売上債権回転期間が長いのです。
売上債権回転率は売上債権の回収の早さを表しますが、売上債権回転期間は売上債権を回収するまでにかかる期間を表します。どちらも売上債権回収にまつわる指標であり、企業の資金繰りを考える上で大切です。
また、売上債権回転期間が請求から回収までの期間であるのに対し、仕入から支払いまでの期間である仕入債務回転期間というものもあります。仕入債務回転期間が売上債権回転期間よりも長ければ、自社の売上代金を回収した後に必要な支払いができるため、資金繰りに余裕ができます。
売上債権回転期間の計算方法
何日で売上債権を回収するのかを示す場合は「売上債権÷売上高×365日」、何ヶ月で回収するのかを示す場合は「売上債権÷売上高×12ヶ月」で算出します。1年間の売上高と、1年間の平均的な売上債権の金額を使って計算しましょう。
売上債権回転率を改善するには
同じくらいの規模の同業他社と比較したり、自社の過去の実績の推移を見たりして、売上債権回転率が極端に低い、大きく下がってきているという場合は何が原因であるかを探る必要があります。
とくに経営状態が悪化している場合は緊急性も高まります。売上債権回転率は売上高に対してどれくらい売上債権を利用しているかという数値のため、数値を上げるには売上高を増やすか、売上債権を減らすことが求められます。
突然売上高を増やすのは簡単にできることではないため、売上債権を減らして数値の改善を試みましょう。以下に売上債権回転率の改善方法を2つご紹介します。
代金回収サイトの短縮を取引先に交渉する
数値を改善する方法として、まず代金回収サイトの見直しが挙げられます。
とくに他の取引と比べて回収サイトが長い取引に関しては、売上債権を回収するまでの期間を短くしてもらえないか取引先に交渉してみましょう。
取引開始当初に商品を売り込みたいがために、回収サイトを長くするなどの条件で取引をしているケースや、交渉力の弱さから回収サイトが長くなってしまっているケースでは、交渉次第で代金回収サイトの短縮が期待できます。
回収サイトの短縮は売上債権回転率をアップさせるのに効果的なため、自社の取引の中で回収サイトの短縮ができそうな取引はないか探してみましょう。
売上債権回収の管理をする
売上債権の回収が期日通りにきちんと行われていないと、売上債権回転率の低下につながります。回収期日の把握や、入金額と請求額の照合、請求漏れのチェックなど、売上債権の回収が適切に行えるように管理を徹底します。
適切に管理することで、回収が遅れている取引にもいち早く気が付き、素早い対応ができます。取引先の担当者への連絡や段階的な支払いの催促をして、売上債権回転率の低下を防ぐことが可能です。不良債権予備軍のチェックもできるでしょう。
不良債権が発生すると、企業の資金面で大きな損失となってしまいます。また、特定の取引先に売上債権が極端に偏ると、回収できなかったときのリスクが高まります。取引額の限度額を超えていないかチェックするなど、取引先別にしっかり管理しておくことで、リスク管理ができるのです。
売上債権の回収が遅れるリスク
適切に債権管理をしていたとしても、売掛金や受取手形などの売上債権が期日までに回収できないケースは起こり得ます。回収が遅れてしまうことで、自社にどのようなリスクがあるのでしょうか。
資金が不足する
たとえば掛け取引の場合、予定通りに取引が進んだとしても商品やサービスの提供から代金を受け取るまでに期間があります。期日を守って支払いを受けた場合であっても自社に現金が入るまでに時間がかかるのに、さらに支払いが遅れてしまうと資金不足に陥る可能性が高まります。
資金力のある企業であれば何とかなるかもしれませんが、中小企業などでは支払いの遅延が企業の運営に影響を与えてしまうケースもあるのです。たとえば仕入れの対価や家賃・光熱費などの費用、従業員に支払う給料など、企業が運営していく上ではさまざまな支払いが必要です。
その支払いに充てる資金は、基本的には商品などを販売した際に受け取る代金でまかないますが、その代金の支払いが遅れると、売上は上がっているのに企業に資金がなくなってしまうという黒字倒産になる可能性もあります。
催促の手間・人件費が発生する
売上債権がきちんと回収されているか、自社で管理することが基本です。請求額と入金額を照合したり、請求漏れがないかチェックしたりと、取引が多ければ多いほど債権の管理業務は複雑になります。
そこへ代金の支払いの遅延が起こると、取引先に連絡したり、催促状や督促状を送ったり、内容証明郵便を送付したりとさらに必要な仕事が増えてしまいます。一度の連絡ですぐに支払ってもらえればよいのですが、なかなか支払ってもらえず繰り返しの督促が必要な場合もあります。
再度請求書を作成したり、催促状や督促状を作成したりするのは手間も時間もかかります。そのための人件費も必要です。
銀行から不良債権とみなされる恐れがある
期日までに回収されない債権と、不良債権は別物ですが、場合によっては銀行などから不良債権とみなされる可能性があります。
倒産などによって回収が困難なものは不良債権としてわかりやすいですが、長期間にわたって回収されていない債権も放置すると最終的には不良債権となってしまいます。
回収できないままの債権を保有していると、銀行からの融資を受ける際などにマイナスな要素となってしまう恐れがあるのです。支払いが滞っている債権は放置せずに、回収ができなくなる前に対処する必要があります。
回収できなかった場合、支払ってくれない取引先が悪いと考えてしまいますが、そのような取引をしているという事実から自社にも信用リスクが発生してしまいます。
売上債権の回収を早めるためにできること
売上債権を用いた取引では、支払い遅延のリスクや貸倒れのリスクが伴います。
また、期日通りに支払いがされたとしても資金化までにはタイムラグが発生するのです。こちらでは、売上債権の回収を早めるためにできることについて解説します。
売上債権をファクタリング会社に買い取ってもらう
先ほど売上債権回転率を改善する方法として、売上債権の管理や代金回収サイトの短縮をご紹介しました。
ただ、管理を徹底するまでには時間がかかりますし、取引先次第で断られる可能性もあります。そのため、効果が出てくるまでにはある程度期間が必要となるでしょう。
そこでご紹介するのが、売上債権をファクタリング会社に買い取ってもらうというファクタリングサービスです。
ファクタリングサービスの概要
ファクタリングサービスを利用する場合、商品やサービスの提供は済んでいるものの支払いが完了していない売掛金を保有していることが必要です。
ファクタリング会社に売掛金を売却することで、期日よりも前に売掛金の現金化が可能になります。手数料を除いた金額ではありますが、企業の資金繰りを改善するために役立てられるでしょう。
ファクタリング会社に申し込みしてから現金化するまでがスピーディなため、急な資金繰りにも対応しやすいのが特徴です。利用者とファクタリング会社のみで契約するサービスと、取引先も交えて契約するサービスがあります。売掛金を譲り渡したことを取引先に知られたくない場合は、利用者とファクタリング会社のみでの契約を選択するとよいでしょう。
取引に関わる人が少ないぶん現金化までがスピーディですが、売却の際の手数料は高めです。
一方で取引先も交えて契約するファクタリングは、取引先に売掛金の売却を知られてしまうことから、場合によっては関係性の悪化が懸念される可能性があります。ただし売掛金の未回収リスクが低いことから、手数料が低めに設定されているのが特徴です。
ファクタリングは資金不足解消に役立つ
期日通りに取引先から支払いがない場合、自社の資金繰りが困難になる原因にもなりかねません。また、売掛金は期日通りに支払いされたとしても、資金化までに時間がかかってしまいます。
ファクタリングサービスを利用すれば売掛金の期日よりも先に現金化でき、資金不足を解消できます。受け取れるのは手数料を除いた金額ではありますが、期日を待つことで資金繰りが困難になって事業が継続できなくなるというリスクを回避できます。資金不足の解消に役立つでしょう。
取引先も交えて契約するファクタリングサービスでは、取引先が直接ファクタリング会社に代金の支払いをします。そのため、期日通りに支払いがされない場合の催促の手間も省けます。
ファクタリングによって不良債権化の心配がない
期日通りに売掛金の支払いが行われない場合は、取引先に連絡したり催促したりする必要があります。支払われないまま放置してしまうと、回収が不可能な債権、つまり不良債権となってしまうのです。不良債権は企業の財務状況を悪化させる原因にもなりかねません。
ファクタリングで売掛金を売却してしまえば、不良債権化の恐れもないというメリットがあります。
ファクタリングと手形割引の違い
ファクタリングは基本的に償還請求権のない契約です。つまり、売掛先の倒産などから売掛金の代金回収ができない状態になったとしても、利用者が受取った代金をファクタリング会社に返還する必要がありません。
売上債権には受取手形もあります。手形を割引きに出して資金化を早める方法がありますが、これを手形割引といいます。手形割引はファクタリングと違って償還請求権があるため、もしも割引に出した手形が不渡りとなれば、割引にだした側が弁済する必要があるのです。
このことから、資金調達に加えて売上債権回転率を高めたいなら、ファクタリングをおすすめします。また、ファクタリングは融資ではありませんが、手形割引は融資の一種です。
まとめ
掛取引や手形取引で発生する売上にかかる債権を売上債権といいますが、主に売掛金、約束手形(受取手形)、電子債権の3種類があります。中でも売掛金はきちんと回収できているかを把握したり、取引先によってバラバラであることも多い期日を管理したりすることが必要です。
売上債権管理をきちんと行うことで、企業の資金繰りがスムーズになります。ただ、管理には手間がかかったり、債権回収の遅れによるリスクが伴ったりと、売上債権を管理・運営していく上では問題点もあります。
ファクタリングサービスを利用することで、資金不足の解消や、不良債権化のリスクをなくすことが可能です。売上債権の回収を早めたいなら、ファクタリングの利用を検討してみてはいかがでしょうか。