事業資金の面で問題が起こらないようにしていくためには、資金計画をしっかりと立てておく必要があります。どういったタイミングで事業資金が不足するのかを把握しておかなければ、資金調達を適切に行えない可能性もあるからです。また、事業資金の集め方にはさまざまなものがあるので、どの手段が最適なのかは経営状況によっても異なると言えるでしょう。今回は、事業資金の具体的な集め方やそれぞれの特徴について解説していきます。
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資金計画を立てておく重要性
会社経営において資金計画をあらかじめ立てておいたほうが良い理由は、事業の継続性を維持するためです。資金繰りが苦しくなってから資金調達を行おうとしても、なかなか思うような手段が取れない場面もあるでしょう。事業が黒字であったとしても、利益の回収までには時間がかかる場合もあるため、手元の資金が不足してしまうといった事態も起こるものです。特に、入金のサイクルよりも支払いのサイクルのほうが短いときには、黒字倒産を引き起こしてしまう可能性もあります。
企業には資金計画とは別に損益計算書があるものの、損益計算書は「発生主義」で算出されるものであるため注意が必要です。金額面の動きは把握できたとしても、売掛金が支払われるまでの時間差などは考慮されていません。「どのタイミングで資金が不足するのか」を知るには、資金の動きまで考えた資金計画の作成が不可欠だと言えます。事業資金の調達で必要な金額や返済能力の有無を判断するためにも、しっかりと資金計画を立てておくようにしましょう。
開業から7年未満なら日本政策金融公庫を利用してみる
事業資金の調達手段として、まず検討しておきたいのが日本政策金融公庫からの借入です。日本政策金融公庫は国が100%出資しており、中小企業の支援に積極的な組織であるため、要件をクリアするなら比較的利用しやすいと言えます。創業時もしくは事業開始から7年未満であるのなら、融資の申請を行うことができるのです。また、事業開始期間とは別に利用にあたって満たすべき4種類の条件のうち、いずれか一つを満たしておく必要もあります。4種類の条件とは、「開業予定の業種に6年以上の勤務経験がある点」といった部分です。ほかにも、「計画的に自己資金を貯めている点」「事業計画書の実現可能性が高い点」「融資限度額を超えていない点」などがあります。
日本政策金融公庫から資金調達を行う場合には、保証人や担保の有無によって金利が変化する点も押さえておきましょう。担保などを設定したからといって、必ずしも有利な金利になるとは限らないものの、設定が可能な場合には意識しておくことが大事です。また、保証人や担保なしでも多額の資金調達が行える金融機関はそれほどないので、検討する価値はとても高いと言えるでしょう。ただ、注意点としてあげられる部分は日本政策金融公庫は政府系金融機関であるため、税金を滞納している状態では融資を受けられません。融資の申請にあたっては、しっかりと要件を満たしているのかをチェックしておきましょう。
民間の金融機関は4種類がある
不足する事業資金の調達を民間の金融機関から行うのも一つの方法です。利用できる民間の金融機関は大きく分けて、「都市銀行」「地方銀行」「信用金庫」「信用組合」の4種類があります。それぞれに経営目的が異なる面があるので、自社に合ったところを選んでいくことが重要です。まとまった事業資金を借りたいときには、資金力に勝る都市銀行や地方銀行を利用してみると良いでしょう。そして、地域密着型の経営を行っている信用金庫や信用組合であれば、事業者にとって有利な条件で資金調達を行いやすいのです。融資限度額は都市銀行などに比べて劣るものの、経営者の人柄や事業の将来性を考慮して審査してくれるといった特徴があります。
これまでの実績に不安がある場合には、信用保証協会を通じて融資を受ける方法もあります。信用保証協会とは、中小企業の支援を目的とした公的機関です。「保証付き融資」などのサービスを提供することで、中小企業が事業資金を調達しやすい仕組みを整えています。信用保証協会でも保証審査は行われるものの、特に問題がなければ融資にあたって保証を受けられるでしょう。金融機関としても信用保証協会が後ろ盾となることによって貸倒れのリスクが下がるので、融資に前向きな姿勢を示してくれるでしょう。銀行などの金融機関では審査のハードルが高い面もあるので、信用保証協会の利用を検討しておくことが大切です。注意点としては、融資の実行後に金融機関を通じて信用保証協会に対して信用保証料を支払わなければならないことがあげられます。資金調達コストをよく理解したうえで利用を考えてみましょう。
地方自治体の支援制度も活用してみよう
それぞれの地方自治体では、新しく事業を始める人などを対象とした起業支援制度があります。各地方自治体によって制度の仕組みも異なるので、申請を行う前に募集期間や要件などをよく確認しておくことが大切です。起業支援制度を活用すれば、事業を始めるにあたって資金調達を行いやすくなるでしょう。ただ、地方自治体が提供する助成金制度は、基本的に地域振興を目的としているのでさまざまな条件が付いています。特定の事業を行っていたり、特定の場所で事業活動を行うことが条件だったりする点です。制度の利用にあたっては、本来の事業目的と合致するのかを慎重に判断してみましょう。
返済が不要なベンチャーキャピタル
事業資金の調達は、何も金融機関からの融資に限ったものではありません。ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けることによって、必要な事業資金をまかなうといった方法もあります。ベンチャーキャピタルとは、将来性のある有望なベンチャー企業に対して出資を行う投資会社のことです。出資を行う代わりに、将来上場した際に株式や事業を売却することで利益をあげることを目的としています。したがって、事業計画に魅力がなければ出資を受けるのが難しい側面もあるのです。
ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリットは、借入による資金調達ではないため返済をする必要がない点があげられます。事業資金を本来の事業活動のために集中させられるので、会社の成長を加速させられるでしょう。ただ、事業の将来性が低いと判断されてしまうと途中で資金を引き揚げられてしまう可能性もあるので注意も必要です。また、経営に関するアドバイスを受けられる一方で、経営方針などに介入される場合もあるため自由な意思決定が難しくなるケースもあります。ベンチャーキャピタルからの出資が自社に合ったものであるかをしっかりと判断する必要があるでしょう。
ファクタリングを活用すれば財務強化につながる
定期的に売掛金が発生している状態であれば、ファクタリングの活用によって事業資金を調達する方法もあります。ファクタリングとは、売掛金などの売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことによって、現金化する手法のことです。会社の負債を増やすことなく資金調達が行えるため、財務的な負担が増えることがありません。買戻しの請求が発生しない契約であれば、売掛先が支払不能に陥ってしまった場合であっても、利用者側が返済の義務を負ってしまうことはありません。必要な事業資金の調達を行いつつ、売掛債権の未回収リスクも減らせるところがファクタリングの優れた面だと言えます。また、調達した資金の使途に制限はないため、幅広い場面において活用することが可能です。
ファクタリングは銀行融資などと比べると審査がスピーディであり、場合によっては即日現金化することもできます。審査の対象が売掛債権の信用力であるため、利用者の経営状況や財務内容はそれほど問題とならないのです。そのため、業績が悪化していたり、資金繰りが苦しい状態であったりしても、審査を通過できる可能性もあります。銀行融資を断られてしまった場合であっても対応してもらえるので、まずは気軽に相談してみると良いでしょう。そして、承諾のいらないファクタリング契約であれば、売掛先にファクタリングを行った事実を知られてしまうこともありません。売掛先との今後の関係をよく考慮したうえで、最適な契約方法を選んでみると良いでしょう。
特に、業績の悪化によって資金繰りが悪くなっているときには、金融機関からの融資は難しくなってしまうものです。すぐにでも資金調達を行う必要があるときの手段として、ファクタリングの利用を検討してみましょう。ただ、ファクタリングを行った場合であっても、金融機関などからの借入金を返済しないと自己資本比率は上がりません。会社の財務基盤を強化するなら、ファクタリングで資金調達を行いつつ、すでにある借入金を計画的に返済していきましょう。そうすることで、自己資本比率が高まり財務面での評価も高まるはずです。金融機関からも資金調達を行いやすい環境を整えられるでしょう。
目的にあわせた資金調達方法を選ぼう
事業資金の集め方にはさまざまな方法があるので、それぞれの違いを押さえたうえで、もっとも適切なものを選んでいく必要があります。融資による資金調達だけでなく、ベンチャーキャピタルからの出資や売掛債権が活用できるファクタリングといった手段もあるのです。いずれにしても、事業資金に問題が起こらないようにするためには、綿密に資金計画を立てておくことが大切です。日ごろから会社のキャッシュフローを意識することによって、経営を安定化させることにつなげられるでしょう。