人材派遣業への新規参入を考える場合には、充分な事業資金を確保しておく必要があります。
理由としては、事前の計画を綿密に立てておくことは大事であるものの、実際に事業をスタートしてみると思いがけない支出に頭を悩まされてしまうこともあるからです。
今回は人材派遣業界の仕組みを理解するとともに、事業を始めるまでにどれくらいの資金が必要になるのか。
また、資金調達の方法としてファクタリングの基本的な仕組みやメリットを紹介します。
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監修者プロフィール
税理士法人 浅野会計事務所
税理士法人浅野会計事務所は、愛知県清須市にあり、創業40年以上、経営・金融・税務・会計・労務のスペシャリストとして各種サポートを行っています。代表の浅野芳郎をはじめ、税理士4名、行政書士1名、社会保険労務士1名ほかファイナンシャルプランナー、宅建資格の資格保持者などもおり、長く経営するためのサポート体制を整えています。
人材派遣業には資金ショートのリスクがある
人材派遣業を行うためには、あらかじめ十分な事業資金を用意しておくことが重要です。
人材派遣業は派遣先とのかかわりによって事業活動が左右されるため、不測の事態に備えて堅実な経営を行っていく必要があります。
たとえば、派遣先の経営状態が悪化してしまい売掛金が回収できないリスクが生じたり、派遣先の支払いサイクルが長いといったリスクが生じます。
派遣社員への給与の支払いは、派遣先の事情にかかわらず行わなければならないため、経費がかさんでしまうことも念頭に置いておく必要があるのです。
また、人材派遣業は競合他社も多いため、他社との競合によって安い料金で請け負ってしまう可能性もあります。
そうした状態に陥ってしまうと、派遣する人材が増えれば増えるほど資金不足になってしまうリスクもあるのです。
入出金のバランスが崩れてしまうと、資金繰りが急速に悪化してしまうこともあります。
人材派遣業を行う際には、さまざまなリスクを想定したうえで資金計画を立てることが大切です。
売上が順調に積み上がっていても、資金繰りがショートしてしまえば一気に信用を失ってしまうので、綿密な計画を立てておくことが重要となります。
改正派遣法が人材派遣業参入へのネックに
人材派遣業を行ううえでは、派遣法の定めを遵守することが大切です。
改正派遣法によって定められた新たな基準によって、充分な事業資金の確保が以前よりも重要になっています。
まず、人材派遣会社を設立するためには資本金を2000万円以上用意することが求められるようになりました。
基準となる資産額が負債総額の7分の1以上と定められており、現預金額も「1,500万円×事業所数」以上となっており、人材派遣業を営む会社の財務内容は厳しくなっているため、新規参入を行うときのネックになっているといえるでしょう。
人材派遣業を行うには法律で定める財務基準をクリアしたうえで、必要な認可を取得して手続きを行っていく必要があります。
人材派遣業に参入するには厚生労働省の認可を得なければならないだけではなく、実質的に事業を展開するためには資本金と財産基準をクリアすることが大切であり、事前に充分な事業資金を確保しておくことが必須となっています。
事務所開設に必要な資金の目安
人材派遣業を始めるときには、事務所を開設するために必要な資金額を把握しておく必要があります。
費用の総額は1000万円程度を目安として準備しておく事が良く、費用のなかでも最も大きな割合を占めるのが「事務所取得費」です。
賃料が50万円のところに事務所を構えるとすれば、保証金として賃料の10カ月分にあたる500万円が必要です。
また、不動産紹介料として賃料の1カ月分にあたる50万円も支払わなければなりません。
「設備・備品費」としては、事務所の機能を整えるためにオフィス家具やOA機器をそろえたり、パンフレットや名刺などを印刷したりする必要があり、250万円程度の資金を用意しておかなければならないものの、オフィス家具を中古品でそろえれば、費用を節約できるでしょう。
開業費としては初月分の事務所賃貸料や社員を募集するための広告宣伝費などで、200万円程度を見積もっておく必要があります。
このほかにも、法人設立のための費用もかかります。人材派遣業を営むオフィスを開設するには、スタッフの登録が行いやすいように駅の近くなど立地の良い場所を選ぶと良いでしょう。
地域によってはスタッフや顧客がなかなか集まりにくいところもあるので、広告宣伝や販売促進のための費用が多くかかってしまう場合もあるため、ある程度余裕のある資金計画を立てておくことが肝心です。
事業資金の調達はファクタリングが適切
事業資金を円滑に調達する手段として、ファクタリングサービスを利用してみるのも良いでしょう。
ファクタリングとは、会社が保有する売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、現金化する方法のことを指します。
利用者側は売掛金の入金前に資金を調達できるので、資金繰りの改善につなげられ、毎月のように売掛債権が発生しているなら、ファクタリングを利用することで資金繰りを安定させることができます。
ほかの資金調達方法と異なる点は、早期に資金調達ができることであり、急ぎの事業資金が不足しているようなときには、適切な方法だといえます。
ファクタリングは銀行融資などと違って借り入れではないため、会社の負債が増えてしまうことはありません。
融資を検討しているときでも、初めにファクタリングを行い税金、社会保険の未納分を納付したり、ノンバンクの借入を完済すると、ファクタリング前と比べると負債が小さくなるのです。
ファクタリングの審査では、売掛債権の信用力が何よりも重視されます。
その一方で、会社の経営状況や財務内容はあまり重視されず、赤字決算や債務超過に陥っている状態であっても、ファクタリングなら利用できる可能性があるでしょう。
また、税金や社会保険料を滞納しているときであっても、分納の手続きをきちんと行っていれば問題ありません。
銀行融資では会社の業績や財務内容が審査では重視されるので、赤字に陥ってしまっていると資金調達が難しくなってしまいます。
銀行融資を断られてしまったというときこそ、ファクタリングのメリットを最大限に活かせるでしょう。
通常のファクタリング契約では売掛先もかかわるため、売掛先がファクタリングについてあまり理解をしていないと、不安を与え今後の取引への悪影響を及ぼしてしまう恐れもあります。
売掛先との関係次第では、承諾のいらないファクタリング契約を結んでみると良く、この場合では、ファクタリングの事実を売掛先は知ることができないので、安心して資金調達が行えます。
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人材派遣業がファクタリングを利用するメリット
人材派遣業を行うにあたってファクタリングを利用するメリットは、何よりも資金調達までのスピードが速い点があげられます。
売掛金の回収が遅れて、入出金のバランスが崩れたときに有効活用できるでしょう。
支払う資金が不足しているときのリスクをカバーできるので、安定的な経営を行うことにつながります。
また、ファクタリングの契約によっては買戻し請求権が発生しないものもありその場合には、売掛債権を譲渡した後に派遣先が倒産しても返済の義務はありません。
あらかじめファクタリング会社に売掛債権を譲渡しておけば、債権の未回収リスクを限定できるのです。
特に、開業当初は何かと資金が必要になる時期なので、もしものときに備えて資金調達方法をよく検討しておく必要があります。
ファクタリングであれば経営状況よりも、売掛債権の信用力が重視されるので気軽に相談ができますし、決算の1期目を迎えていない状態であっても、売掛債権さえ有していればサービスを利用できるのです。
業績が悪化してから資金調達を行うのは手段が限られてしまう面もあるため、ファクタリングは短期的な資金繰りの改善に役立つのです。
時間的な余裕があるうちに、どのファクタリング会社を利用するのか検討しておきましょう。
事業資金の問題はファクタリングで解決!
人材派遣業はスタッフや顧客を集め続けなければならない業種なので、広告宣伝費や販売促進のための費用が多くかかってしまいがちです。
新規参入のときは売上が伸びていっても、支出する費用も多いため事業資金がショートしてしまうリスクもあるでしょう。
入出金のバランスが崩れてしまうと黒字倒産を引き起こしてしまう可能性もあるので、資金管理をしっかりと行っておく必要があります。
売上が上がっているにもかかわらず、手元の資金が少なくなっているときこそ、ファクタリングの利用を検討してみましょう。
資金繰りを円滑にして経営を安定させるためにも、JTCに相談して事業資金についての問題の解消を図りましょう。
実績のあるファクタリング会社を選ぶことで事業資金を確保して、ビジネスチャンスをさらに拡大できる可能性が高まります。