資金繰りに頭を悩ませている中小企業経営者は少なくありません。入金されるはずの売掛金が遅延により入金されなかったり、売上債権に対して仕入債務のサイトが短かったりすれば、資金繰りが大変です。
運転資金を調達する代表的な方法として銀行融資がありますが、審査が厳しく、資金調達に時間がかかるので、急な出費には対応できないかもしれません。
一方で、ファクタリングと呼ばれている資金調達方法があります。手持ち資産である売掛債権を有効活用することで資金調達が可能な方法です。
本記事では、売掛債権を利用して資金調達が可能なファクタリングについて解説します。
仕組みや利用するメリットについて紹介し、あわせて中小企業の資金繰り悪化の主な原因についても考察します。
資金調達方法に悩んでいる事業者の一助となれば幸いです。
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中小企業の資金繰り悪化の主な原因とは?
中小企業経営者にとって、資金繰りは事業運営における重要課題の一つです。
たとえ売上が伸び、帳簿上は黒字であっても、現金が不足し支払いができないと「黒字倒産」となります。
ここでは、どうして中小企業は資金繰りが悪化するのかについて解説します。主な原因として以下の3点があるので、順を追って紹介しましょう。
- 売掛金の回収遅延
- 支払サイトと回収サイトのずれ
- 急な支出
売掛金の回収遅延
中小企業の資金繰りが苦しくなる要因として、売掛金の回収遅延があります。
商品やサービスを納品した後、請求書を発行しても、実際に入金されるのは数週間から数ヶ月先も珍しくありません。
さらに、取引先の経営状況によっては、入金が遅れたり、最悪の場合、倒産したりなどで未回収となるリスクもあります。
その間、仕入れや人件費、家賃といった支払いを企業は行わなければなりません。
売掛金の回収遅延は、キャッシュフローの悪化をもたらすので注意する必要があるでしょう。
回収サイトと支払サイトのずれ
回収サイトと支払サイトのずれも、資金繰りの悪化の理由としてあげられます。回収サイトが、支払サイトより長い場合が該当します。
売上金が入金される前に、支払いが先にやってくるので、企業は手持ち資金より立て替えなければなりません。
特に大型受注が発生した際には、仕入資金が急増し、手持ち資金に余裕がないと資金ショートする恐れがあるので注意が必要です。
急な支出
機械の故障による修理費用や、災害などによる急な支出が発生した場合も、中小企業の資金繰りが悪化します。
とりわけ中小企業は、大企業に比べて内部留保が少なく、いざというときの備えが十分でない場合があります。
突発的に費用が必要となった場合に対応するには、日ごろから手持ち資金を厚くしたり、支出の平準化を心がけたりしておくことが重要です。
資金繰り改善のために今すぐできる行動
資金繰りを改善するため、経営者はどのような点に注意する必要があるでしょうか。
今すぐできる行動として、次の3点が考えられるので、それぞれ解説します。
- 資金繰り表の作成
- キャッシュフローの見直し
- ファクタリングなど外部資金活用の検討
資金繰り表の作成
資金繰り表の作成は、キャッシュフローを改善するために今すぐにできる行動のひとつです。
資金繰り表とは、自社の資金繰りを把握することを目的とした表をいいます。資金繰りを作成することで、現金や預金の将来の流れや残高を見通すことが可能です。
特に、資金が不足する時期を事前に把握できるので、早めの対応が可能になります。
資金繰り表をまだ作成していない経営者は、日本政策金融公庫の公式サイトにある「各種書式ダウンロード」から入手できるので、活用することをおすすめします。
(参考:日本政策金融公庫|各種書式ダウンロード)
キャッシュフローの見直し
資金繰りを改善するためには、キャッシュフローを見直さなければなりません。
帳簿上では利益を計上していても、手元資金が不足するケースがあります。手元資金が少なくなると、支払いが滞る恐れがあり、事業運営に深刻な影響を及ぼします。
そのためには、キャッシュフローの見直すこと、特に「売掛金の早期回収」「在庫の適正化」「支払サイトの見直し」は重要です。
定期的にキャッシュフローを見直すことで、資金繰りの悪化が防げます。
ファクタリングなど外部資金活用の検討
資金繰りの改善方法として、外部資金の活用を検討することも有効です。
特に、売掛債権を早期に現金化できるファクタリングは、早期に現金化が見込まれるのでおすすめです。
制度融資や補助金・助成金の活用も検討すべき選択肢といえます。これらの手段を適切に組み合わせることで、資金繰りの安定化が見込まれるでしょう。
ただし、外部資金を活用する場合、それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。
自社の状況に応じた慎重な検討が必要といえるでしょう。
ファクタリングとは?仕組みと資金繰りへの効果を解説
資金繰りを改善する方法のひとつとしてファクタリングがあります。前にも触れたように、ファクタリングは売掛債権を利用して行う資金調達方法です。
以下では、ファクタリングの定義や取引形態(2者間・3者間)、および売掛債権の早期現金化の仕組みについて解説します。
ファクタリングの定義
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(売掛金・受取手形)を引き受けるサービスをさし、もともとヨーロッパで発達した金融システムです。
企業は、自社が保有する売掛債権を譲渡したり、保証を受けたりすることで、未回収リスクを軽減・回避することが可能です。
売掛債権を譲り渡すファクタリングを「買取型ファクタリング」、保証を受けるファクタリングを「保証型ファクタリング」といいます。
ファクタリングといえば「買取型」をさすのが一般的であるので、以下では買取型ファクタリングを前提に解説を進めていきます。
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取引形態(2者間・3者間)
ファクタリングには主に「2者間」と「3者間」の2つの取引形態があるので、それぞれの特徴について紹介します。
2者間取引
2者間取引は、企業とファクタリング会社の間での契約です。
特徴として、売掛先への通知や承諾が不要な点があります。そのため、売掛先に知られずにファクタリングの利用が可能です。
売掛先への連絡等が不要なので、2者間取引は審査が早く、現金化もスムーズな点も特徴としてあります。
入金管理を疎かにしてはいけない点も、2者間取引の特徴です。売掛先から入金された売掛金を、利用企業はファクタリング会社に入金しなければいけないからです。
3者間取引に比べ手数料が高めに設定されている傾向があるのも特徴で、8~18%が相場とされています。
3者間取引
3者間取引は、企業、ファクタリング会社、売掛先の三者間で契約を結ぶ取引形態です。
売掛先の承諾が必要となる点が2者間取引と大きく異なります。
2者間取引では、利用企業がファクタリング会社に入金しますが、3者間取引では売掛先がファクタリング会社に入金します。
利用企業は、ファクタリング会社に入金する手間がかかりません。
手数料が割安になる点も3者間取引の特徴です。
売掛先が、直接ファクタリング会社に入金するため、ファクタリング会社にとって未回収リスクが低くなるからです。3者間取引は、1.2%~が相場とされています。
一方で、売掛先の承諾が必要なので、現金化まで時間がかかります。
また、売掛先にファクタリングを利用していることが知られることも3者間取引の特徴です。
売掛債権の早期現金化の仕組み
ファクタリングは、銀行融資に比べ、早期の現金化が可能です。中でも、2者間取引の場合、最短即日の現金化が可能なファクタリング会社もあります。
ここでは、2者間取引における現金化の流れについて紹介します。
2者間取引における仕組みは以下の通りです。
1.問い合わせ
企業は自社の保有する売掛金を、ファクタリング会社が買い取ってもらえるかどうかを問い合わせます。
2.必要書類の提出
買取可能である場合、企業はファクタリング会社が提示した必要書類を提出します。
3.審査
ファクタリング会社は、提出された書類をもとに審査します。
4.契約
審査の結果が申込企業に提示され、申込企業が問題ないと判断した場合、ファクタリング会社と契約を結びます。
5.現金化
契約後、ファクタリング会社から、指定した口座に手数料を差し引いた金額が振り込まれます。
6.入金
取引先から売掛金が入金されると、利用企業はファクタリング会社に遅滞なく売掛金を入金します。
ファクタリングで資金繰り改善する5つのメリット
ファクタリングの仕組みなどについて解説しましたが、ファクタリングを利用することで企業が得られるメリットにはどのような点があるのでしょうか。
主なメリットとして5点あるので、それぞれ紹介します。
- 借り入れではない
- 資金化までのスピードが早い
- 借入よりも審査が通りやすい
- 債務超過・税金滞納中でも利用可
- 資金用途が縛られない
借入ではない
ファクタリングは、借入ではありません。売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで現金化する方法であるからです。
借入であれば返済義務が生じます。一方、ファクタリングは不要です。借入でないため、貸借対照表上の負債を増やすことなく資金調達が可能です。
負債が増えると、企業の安全性の指標である自己資本比率が低下します。
しかし、ファクタリングを利用すれば、負債の増加がないため、企業の安全性を損なうことなく資金調達ができます。
現金化までのスピードが早い
ファクタリングを利用するメリットとして、現金化までのスピードが早い点があります。
銀行融資の場合、書類の準備から審査には、通常3週間から1ヶ月近く必要です。
ファクタリングであれば、最短即日に現金化が可能なファクタリング会社もあります。
急な出費が発生しても、ファクタリングであれば、安心して資金調達が見込まれるでしょう。
借入よりも審査が通りやすい
借入よりも審査が通りやすい点もファクタリング利用の利点としてあげられます。
融資の場合、審査対象は申込企業です。しかしファクタリングの審査では、売掛先が審査対象です。
売掛先が信用力のある企業であれば、ファクタリングの審査が通りやすくなります。
銀行融資のような厳しい審査基準でないため、ファクタリングは資金調達のハードルが低く、多くの企業にとって利用しやすい手段となっています。
債務超過・税金滞納中でも利用可
前述のように、ファクタリングの審査対象は、売掛先です。銀行融資は、申込企業が審査対象であるので、決算状況も審査対象となります。
そのため、企業が債務超過や税金滞納中であれば、審査をクリアすることは厳しいです。
ファクタリングの場合、売掛先を審査するため、決算状況が芳しくなかったり、税金滞納中であったりしても利用できます。
資金用途が縛られない
ファクタリングを利用するメリットとして、資金使途に縛りがない点があります。
銀行融資の場合、申込時に運転資金や設備資金など、資金使途を確認するのが一般的です。仮に資金使途が違反していることが銀行に、知られた場合は一括回収の恐れがあります。
ファクタリングは、資金使途に縛りがないため、仕入資金や人件費など、自社が必要とするさまざまな用途に活用できます。
資金繰り改善におけるファクタリング以外の選択肢と比較表
資金調達にはさまざまな方法がありますが、ファクタリング以外の手段(ビジネスローン、銀行融資、クラウドファンディングなど)を比較してみました。
手段 | 即時性 | 債務性 | 審査の緩さ | コスト | 向いている企業 |
ファクタリング | ◎ | 無 | ◎ | 中〜高 | 売掛金がある企業 |
ビジネスローン | ○ | 有 | ○ | 高 | 実績がある企業 |
銀行融資 | △ | 有 | △ | 高 | 実績がある企業 |
クラウドファンディング | △ | 無 | △ | 低 | 話題性がある企業 |
ファクタリングは、即日~1週間程度で現金化が可能です。融資でないので、返済の義務がありません。
主に売掛先を審査するので、申込企業の決算状況が悪くても通る場合があります。手数料は取引形態によりますが、1.2%~18%ほど必要です。
ファクタリングは、売掛金がある企業に向いています。
ビジネススローンは、審査に1週間~2週間ほどかかることが多いです。負債であるため、返済の義務があります。
審査については、業種の特性等に応じて、柔軟な審査を行っているところもあります。
銀行融資に比べ、融資金額が低く、金利が高めに設定されているのが一般的です。
事業実績も審査対象となるため、実績に乏しい企業は厳しいかもしれません。
銀行融資は、審査に3週間~1ヶ月ほどかかるため、急な資金調達には向いていないといえます。
ビジネスローン同様、負債であるため、返済の義務が発生します。
審査はやや厳しい傾向にある反面、実績のある企業は低金利での資金調達ができ、場合によっては、多額の資金を調達することも可能です 。
クラウドファンディングは、ネットを通じて不特定多数から資金を調達する方法です。プロジェクトを公開し、共感を得られた場合、出資者より資金が調達できます。
返済義務がなく、審査もないので、低コストでの資金調達が可能です。
一方で、プロジェクトに共感する人が少ない場合は、目標金額に達しない場合もあるので注意が必要です。
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まとめ
売上が順調で利益が出ていても、資金繰りが悪化すれば資金ショートを引き起こし、倒産に至るリスクがあります。
資金ショートを起こさないためには、資金繰り表を作成したり、キャッシュフローを見直したりして、資金繰りを改善しなければなりません。
しかし急な出費が発生し、手持ち資金に不安がある場合、ファクタリングは有効な資金調達方法であるといえます。
ファクタリングは、自社に売掛金があれば利用できる資金調達方法です。即金性に長け、審査も銀行融資のように厳しくありません。
手持ち資金に不安があったり、急な出費が発生したりする場合、さまざまな用途に利用できるファクタリングを利用してみてはいかがでしょうか。
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