事業資金の調達が必要になったときには、カードローンのキャッシングを利用する方法もあります。
ただ、無計画に借入を行ってしまっては経営リスクを高めてしまう可能性もあるのです。
カードローンの基本的な仕組みを理解したうえで、無理のない資金計画を立てていくことが大切でしょう。
また、カードローン以外の資金調達方法として、ファクタリングの利用を検討してみるのも良いと言えます。
まず、事業資金としてキャッシングを利用する際の注意点について見ていきましょう。
個人向けのカードローンは事業資金に使えない
いつでも自由に借入や返済が行えるという点で、キャッシングサービスには便利な面もあります。
あらかじめ契約を結んでおけば、必要に応じてすぐに利用することが可能です。しかし、個人向けカードローンは事業資金目的での利用が禁じられているため注意しなければなりません。
そこで金融機関によっては、事業者向けカードローンのサービスを提供しているところもあるのです。
事業資金を確保するために利用するのであれば、事業者向けのものを選びましょう。
個人向けカードローンには総量規制が適用されるものの、事業者向けには適用されない仕組みとなっています。
ある程度まとまった金額を確保したいときには、事業者向けのカードローンを選ぶほうが使い勝手も良いでしょう。
事業者向けカードローンを利用しよう
事業資金が不足しているときには、個人向けカードローンを利用したくなる場合もあるでしょう。
しかし、原則として事業資金としての利用が認められていないため、発覚したときには契約違反となり全額返済を迫られるリスクもあります。
わざわざリスクを高めてしまうよりも、事業者向けカードローンを利用したほうが無難です。
事業者向けカードローンは銀行融資よりも手間がかからずに、比較的スムーズに審査を行ってもらえます。
審査で必要となる書類は、本人確認書類と直近2期分の決算書程度であり、審査もスピーディに行ってもらえるのです。
インターネットから融資の申請ができ、金融機関によっては1週間~10日程度で融資を行ってくれるところもあります。
また、事業者向けカードローンでは銀行融資ほど審査基準が高くありません。
銀行融資の場合であれば会社の経営状況や返済能力が厳しくチェックされます。
多くの書類を提出する必要があり、手続きも煩雑になってしまいがちです。
しかし、事業者向けカードローンでは信用情報に問題がなく、継続した利益をあげているなら審査を通過する可能性は高いでしょう。
無担保・無保証で融資を行ってくれるところもあるので、銀行融資を断られてしまったときでも審査に応じてもらえます。
事業者向けなら総量規制の対象外
事業者向けカードローンでは個人向けのものとは異なり、総量規制の対象外となっています。
総量規制とは、個人が銀行以外の金融機関から収入の3分の1以上を借りることができないルールのことです。
しかし、事業者向けカードローンでは総量規制が影響しないため、ほかに個人的な借入があったとしても借入限度額に制限がかかってしまうことはありません。
その一方で、個人向けカードローンは事業者向けカードローンと比べて、借入限度額が低めに設定されている点には注意しておきましょう。
手続きは事前に済ませておくことが大事
事業者向けカードローンの利用を検討するときには、あらかじめ手続きを済ませておくほうが有利な条件で必要な資金を借りられるでしょう。
一度審査に通れば、後はいつでも自由に借入を行えます。
すぐに必要がなかったとしても、1~2枚程度のカードを作っておけば、いざというときに安心でしょう。
会社の業績が傾き、資金繰りが悪化してから申請手続きを行おうとしても、審査を通過しないケースもあります。急に資金調達が必要になるときのことも想定して、余裕がある時期に申請しておくほうが無難です。
申請手続きを行う際には、一度に複数の会社に申し込むのは良くありません。
カードローンの申請履歴は信用情報として記録されるものであるため、銀行での審査においてマイナスになってしまうでしょう。
銀行や信販会社、消費者金融などを比較したうえで、自社の実情にあわせた融資先に申請手続きを済ませておきましょう。
法人が利用できるカードローンは少ない
事業者向けのカードローンの種類は多いものの、個人事業主を対象としているものが大半です。
法人向けにサービスを提供しているのは、銀行や一部の信販会社・消費者金融となっています。
また、法人への融資については「証書貸付」が一般的である点についても気をつけておきましょう。
証書貸付とは、融資が行われるたびに契約書を交わす契約方法のことを指します。
銀行融資ほど審査の基準は厳しくないものの、提出しなければならない書類もあるので、あらかじめ準備を整えておく必要があるのです。
また、事業者向けカードローンでは最低でも半年以上の事業歴が必要であるため、開業時に利用することはできません。
法人向けのサービスの利用が難しい場合には、カードローン以外の資金調達方法についても検討しておきましょう。
事業を開始して間もなくであれば、政府系金融機関である日本政策金融公庫から融資を受けるのも一つの方法です。
国が出資しているということもあり、中小企業の支援に積極的であるため、要件をクリアしていれば融資を受けられる可能性があります。
融資制度の種類にもよるものの、なかには無担保・無保証で事業資金を借りられる制度もあるのです。
一度にまとまった事業資金を借りることもできるので、まずは気軽に相談してみましょう。
ただし、政府系金融機関であるため税金の滞納がある場合には融資を受けることができません。
申請手続きを行う際には、きちんと融資条件などを確認したうえで取り組むようにしましょう。
ファクタリングを活用して資金繰りを改善
融資以外の資金調達方法としては、ファクタリングを活用するのも良いでしょう。
ファクタリングとは、会社が保有している売掛金などの売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことによって、現金化する手法を指します。
審査において重視されるのは「売掛債権の信用力」や「取引内容」なので、審査のスピードが速いのが特徴です。
上場企業や政府系機関に対する売掛債権ならば、即日現金化もできるケースもあります。
赤字決算や債務超過、税金の滞納といった状態でも審査に応じてもらえる可能性もあるので、銀行融資やカードローンの審査に通らなかった場合でも問題ありません。
それから、ファクタリングは自社が保有する資産の売却にあたるため、負債が増えてしまうことはありませんので、気軽に利用ができます。
また、調達した資金の使途も限定されていないため、さまざまな場面で役立てることができるでしょう。
資金繰りの改善だけでなく、大口の受注が入って急に資金が必要になったという場合にも有効な手段となります。
買戻しの請求が発生しない契約であれば仮に売掛先が倒産して支払不能になったときでも、利用者は返済の義務を負いませんので会社の財務的なリスクを解消するためにもファクタリングを役立てられるのです。
売掛債権を活用した資金調達は、経済産業省も推奨しているものであり、近年注目を浴びている資金調達方法だと言えます。
しかし、売掛先によっては「売掛金に手を出すほど、経営が苦しいのか」と誤解されてしまうケースもあるでしょう。
欧米諸国では一般的な資金調達手段であっても、日本ではまだ馴染みが薄い面もあるのです。
ただ、売掛先との関係が気になる場合には、「承諾のいらないファクタリング契約」を結ぶこともできます。
利用者とファクタリング会社の間で手続きが進められるため、売掛先がファクタリングの事実を知ることもありません。
売掛先との関係を考慮したうえで、今後の関係に悪影響が出ないような形で契約手続きを進めてみましょう。
すぐに事業資金が必要ではない場合であっても、経営環境の変化によって資金繰りが悪化してしまうこともあります。
ファクタリングはそんな時でも対応できる数少ない資金調達の手段といえるでしょう。
日ごろから複数の資金調達方法を検討しておくことで、いざというときに素早く対応できるようにいたしましょう。
関連記事:ファクタリングで資金調達できる仕組みをわかりやすく解説
将来のリスクに備えて対策を立てておこう
資金繰りが悪化している状態にあると、どうしても目先の対策だけに意識が向いてしまいがちでしょう。
しかし、事業活動を継続していくなかでは、将来的なリスクについても考慮しておく必要があります。
今後得られる利益を圧迫するほどの借入を行えば、経営を不安定にさせる要因にもなるでしょう。
きちんと資金計画を立てたうえで、どのタイミングでどれくらいの資金が必要になるのかを考えておくことが重要です。
そして、いろいろな資金調達方法を比較することによって、自社にとって最適なものが何かを見極めておきましょう。