2021年に総務省が調査した「経済センサス」によると、日本の企業等の2020年の売上高は1,693兆円、うち製造業は387兆円と企業等の売上の約22%を占めています。
製造業は日本の基幹産業業種ですが、資金繰りが厳しい業種でもあります。製造業が資金繰りに厳しくなる理由には何があるのでしょうか。
本記事では、製造業が資金繰りに苦しむ理由について解説します。資金繰りの改善策や資金調達方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
製造業の資金繰りが厳しくなる理由とは？
製造業が資金繰りに厳しくなる理由として、次の5点があります。
- 製造業は掛売りが基本であるため
- 売掛債権の回収サイトが長期化しやすいため
- 設備に過剰な投資を行うため
- 固定費の支払いが多いため
- 多くの材料費および外注費が必要なため
それぞれについて解説します。
製造業は掛売りが基本であるため
消費者が商品を購入する場合、支払方法の一つとして現金での取引がありますが、製造業は現金での取引ではなく基本的に「掛売り」で行われます。
掛売りとは、製品を取引先に販売した際にすぐに代金を回収せずに後日請求書を発行して、取引先との契約により決められた日に代金を回収する取引です。売掛金の入金日まで販売先から売上代金が入金されず、一方で人件費や光熱費等毎月支払う費用があるため、製造業の多くは資金繰りが厳しくなります。
売掛債権の回収サイトが長期化しやすいため
製造業の特徴として、売掛債権の回収サイトが長期化しやすい点があり、そのことが資金繰りを厳しくなる要因として考えられています。材料購入等により現金が出ていってから製品を製造し、出荷して製品の代金が入金されるまで製造業では2～3ヶ月かかるとされています。
製造に時間のかかる製品を受注した場合、長めに回収サイトを算段しておくことが必要であるため、数ヶ月分の運転資金を確保しておくことが必要です。
設備に過剰な投資を行うため
過剰な設備投資も製造業が資金繰りを厳しくする要因としてあります。事業運営を行うために、製造業は機械等の設備が必要です。古くなった機械を新しい機械に買い換えることもあります。設備にかかる費用は高額なので、銀行等金融機関より資金調達を行って購入するのが一般的です。
また、機械等設備には、メンテナンスが必要であり、急な故障等により修理が必要となる場合もあります。修繕等保守費用がかかることをあらかじめ想定し、資金繰り計画を立てることが重要です。
固定費の支払いが多いため
固定費の支払割合が変動費より高いことも製造業の特徴の一つです。そのため、売上が減少すると資金繰りが厳しくなるケースが起こります。
費用には、変動費と固定費とがあり、変動費は売上により変動しますが、固定費は売上の増減にかかわらず一定です。売上が減少した場合、固定費が重荷となってしまいます。
その結果、資金繰りが悪化しやすい傾向となります。運転資金を調達するため、金融機関に融資を申込むケースがありますが、売上減少による融資の申し込みのため、金融機関が審査に慎重になることも少なくありません。
多くの材料費および外注費が必要なため
製造業において、受注が決まると材料を仕入れたり、場合によっては外注したりすることが必要です。材料費や外注費は売掛金が入金される前に持ち出されるため、事前に持ち出しする資金を確保しておくことが必要です。
そのため、製造業は製品を作り出して入金されるまでのサイトが長いため、資金繰りが厳しくなるケースが起こります。
製造業が利用する資金調達方法とは？
製造業は持ち出しが多いため、事前に資金調達を行っておく必要があります。製造業が利用する資金調達方法として次の5つの方法がありますので解説します。
- ファクタリング
- 不動産担保融資
- ABL
- 助成金・補助金
- 出資
ファクタリング
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金を、ファクタリング会社に債権譲渡して資金調達する方法です。製造業は掛売りが基本であるため、売掛金の期日まで売上金が入金されないので、企業はファクタリング会社に売掛金を債権譲渡することで、早期の現金化が可能となります。
ファクタリング会社を利用する場合、企業はファクタリング会社の審査を受けなければなりません。ファクタリングは銀行融資より審査期間が短く、最短即日で審査結果および見積書が企業に提示され、問題なければ企業はファクタリング会社と契約を結びます。
ファクタリングには、2つの契約方法があります。
「2者間ファクタリング」「3者間ファクタリング」です。
2者間ファクタリングとは、申込企業とファクタリング会社との契約により資金調達を行います。売掛先に知られずに資金調達が可能です。審査が早く、即日現金化が可能である。
手数料は10％前後が相場とされています。
3者間ファクタリングとは、申込企業、ファクタリング会社、および売掛先との間で契約します。売掛先の承諾が必要なため、2者間ファクタリングと異なり、審査に時間がかかるのが一般的です。手数料は1.２％～が相場とされています。3者間ファクタリングを利用する場合、売掛先にファクタリングの利用が知られる点にも留意する必要があります。
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不動産担保融資
不動産担保融資とは、銀行等市中金融機関や日本政策金融公庫が取り扱っている融資です。
企業が保有する土地や建物等不動産を担保として、資金調達を行います。
不動産を担保として融資を行う場合、低利で多額の資金調達が見込まれ、資金繰りにゆとりが生まれます。金融機関は低利で多額の資金を融資するため、審査が厳しくなるのが一般的です。企業の財務状況や今後の見通し等、金融機関は総合的に判断することが必要であるため、審査期間が1ヶ月程かかるとされています。
融資を実行したものの、万が一企業が倒産等により債務が不履行になった場合、金融機関は担保である不動産を売却して、貸し出した資金の返済資金として充当します。
ABL
ABL（Asset Based Lending）とは、企業の流動資産（集合動産・在庫・売掛債権等）を金融機関が担保として融資を行う資金調達方法です。
ABLは、流動資産である在庫や機械等動産を担保として利用可能であるため、企業が不動産を保有していなくても、在庫や動産等を担保設定することで資金調達ができます。
無担保での融資でないため、金利を抑えて利用することも可能です。
一方で、担保としての在庫情報等を企業は定期的に金融機関に報告することが必要であるため、企業は管理業務が増える可能性があります。報告を受けた金融機関は、担保の見直しを行うと同時に、融資枠を調整します。担保の評価によっては、企業は必要な融資枠が確保できなくなる恐れがあるかもしれません。
助成金・補助金
助成金・補助金とは、国や地方自治体などから受け取れる事業活動への支援金です。
助成金や補助金は、支給目的が定められており、該当する場合に企業は申請が可能です。
返済が不要なため、資金調達の一つとして助成金や補助金は利用されます。
注意点として、助成金・補助金が入金されるまでには半年近く、場合によっては1年近くかかる場合があります。実際に使った費用の内訳等を国や地方自治体に報告し、確認後に企業に助成金・補助金が入金される仕組みなので、事前に手持ち資金や他の資金調達方法で費用を支払うことが必要です。
出資
第三者より出資として資金調達を行うことも可能で、出資元としてベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などがあります。
出資による資金調達としてのメリットは、返済が不要な点です。
出資により、株主資本が増加するため、企業の安全性を示す「自己資本比率」が上昇し、社会的に信用度が増します。出資元であるベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから、経営のノウハウなどの助言を受けられることも利点の一つです。
注意点として、出資者に配当金を支払う際にコストがかかる点があります。
融資に支払う利息より割高となるケースがあるため、出資による資金調達には慎重に行わなければなりません。出資者は株主であるため、株主総会等に出席して、経営に関して口出ししてくる可能性もあります。出資額が株式の半数に該当する場合、経営権が第三者に移り、自由な経営ができなくなる場合があるため、経営者は株主比率に留意して出資を行うことが必要でしょう。
製造業の資金繰りを改善する方法とは？
製造業は資金繰りが厳しいといわれますが、どのような点に注意すれば資金繰りが
改善されるのでしょうか。着目点として次の4点があるので紹介します。
- 原価管理を徹底する
- 業務改善に取り組む
- 在庫管理を徹底する
- ファクタリングを利用する
原価管理を徹底する
原価管理を徹底することは製造業にとって大変重要です。卸売業や小売業では、仕入原価が売上原価となりますが、製造業の場合、販売した製品の製造原価が売上原価となります。
製造原価には、材料費や人件費、光熱費等の経費が含まれています。製品ごとに原価率を把握し、同時に製造原価に含まれる人件費や光熱費の見直しを企業が徹底することで、資金繰りの改善に役立つでしょう。
業務改善に取り組む
資金繰りを改善するためには、支出の見直しを行うことが必要です。原価管理を徹底することと同様に業務の改善も重要です。
製造業は小さな改善により作業効率が改善されるケースがあります。例えば、工具や資材の置き場所を明確にしたり、作業スペースの配置を見直したりすること等で、作業効率も改善され時間短縮が可能です。コストの削減につながり、資金繰りの改善にも役立ちます。
在庫管理を徹底する
製造のために仕入れた原材料や製造した製品を、一時的に保管しておく必要が製造業にはあります。保管している原材料や製品の在庫管理を徹底することで、資金繰りの改善にも役立ちます。必要以上に在庫を抱えることがなくなり、仕入代金の見直しが可能です。
適切な在庫量が把握できれば、保管スペースの見直しができ、保管する倉庫のスペースを縮小できると、賃料の削減も期待できます。
ファクタリングを利用する
製造業は売掛サイトが長いため、ファクタリングを利用することで、資金繰りの改善が可能です。
ファクタリング会社に手持ちの売掛金を債権譲渡することで、売掛金の早期現金化が可能となり、手持ち資産の有効活用で資金繰りの改善に役立ちます。
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ファクタリングが製造業にマッチする理由とは？
製造業がファクタリングにマッチする理由として以下の３点があります。
- 早期の現金化が可能
- 審査に財務状況が影響しない
- 貸倒リスクを回避できる
それぞれについて、順を追って紹介します。
早期の現金化が可能
売掛金は、期日まで入金されませんが、ファクタリングを利用すると早期の現金化が見込まれます。ファクタリング会社は申込みがあると、即日審査を行い、早ければ審査から１日で企業の指定口座に入金されるのが一般的です。
ファクタリングを利用することで、企業は資金繰りの改善が図れたり、機械の修理等で急な出費に対応できたりするので、スムーズな事業運営が見込まれます。
審査に財務状況が影響しない
企業が金融機関に融資を申し込む場合、金融機関は申込企業の財務状況を審査します。
融資した資金が確実に返済できる財務内容であるのかを、金融機関はチェックするためです。
一方、ファクタリングの場合、ファクタリング会社が審査するのは主に売掛先です。
売掛金が問題なく回収できるかどうかを審査するためです。そのため、申し込み企業の財務内容が芳しくなくても、ファクタリングの審査には影響しない場合があります。
貸倒リスクを回避できる
貸倒リスクを回避できる点も、ファクタリングを利用するメリットとしてあります。
ファクタリングは、早期の資金調達が可能であると同時に、売掛債権の債権譲渡の役割も果たしています。
企業は売掛先が倒産等により債務不履行に陥った場合、企業は「貸倒損失」として売掛債権を計上しなければなりません。ファクタリングを利用し、ファクタリング会社に債権譲渡することで、前述の返済の義務がないとともに、企業は貸倒リスクからも回避できます。
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製造業は先行投資に資金が必要で、売掛債権の回収サイトが長期化しやすい業種であるため、資金繰りが厳しい業種といわれています。製造業者が資金繰りを改善するためには、原価管理を徹底したり、業務改善に取り組んだり等を行うことが必要です。ファクタリングもまた、資金繰りを改善する手段のひとつとしてあります。
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