売掛金と未収入金の違いとは?仕訳方法・注意点まで徹底解説

事業資金
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  1. はじめに:売掛金と未収入金を混同するリスク
    1. 具体的なリスク
  2. 売掛金と未収入金の定義|最初に押さえるべき基礎
    1. 売掛金の正確な定義
    2. 未収入金の正確な定義
  3. 売掛金と未収入金の決定的な違い:5つのポイント
    1. ポイント1:取引の性質「本業かどうか」
    2. ポイント2:損益計算書上の分類
    3. ポイント3:貸借対照表上の分類
    4. ポイント4:回収管理の方法
    5. ポイント5:消費税の取扱い
  4. 業種別での売掛金と未収入金の判断
    1. ケース1:車両(自動車)の売却
    2. ケース2:不動産(土地・建物)の賃貸
    3. ケース3:有価証券(株式・債券)の売却
  5. 売掛金と未収入金の仕訳の違い
    1. 売掛金の仕訳パターン
    2. 未収入金の仕訳パターン
  6. 売掛金と未収入金の共通点と相違点まとめ
    1. 共通点
    2. 相違点
  7. 売掛金と未収入金の判断フローチャート
    1. 実務的なポイント
  8. 決算処理での売掛金と未収入金の取扱い
    1. 売掛金の決算処理
    2. 未収入金の決算処理
  9. 売掛金と未収入金の回収管理の違い
    1. 売掛金の回収管理
    2. 未収入金の回収管理
  10. 売掛金と未収入金の融資審査への影響
    1. 売掛金が融資審査に与える影響
    2. 未収入金が融資審査に与える影響
    3. 融資審査での一般的な見方
  11. 実務Q&A:売掛金と未収入金でよくある質問
    1. Q1:不動産賃貸業の場合、家賃は売掛金ですか、未収入金ですか?
    2. Q2:分割払いで固定資産を売却した場合、毎年末の処理はどうするのですか?
    3. Q3:役員に貸し付けた金銭の利息が未収の場合、未収入金ですか?
    4. Q4:売掛金と未収入金の両方がある場合、相殺できますか?
    5. Q5:消費税の取扱いは売掛金と未収入金で同じですか?
  12. 売掛金と未収入金の時効期間
    1. 売掛金の時効期間
    2. 未収入金の時効期間
  13. 売掛金と未収入金の時効期間の違いから見える経営戦略の本質
    1. 時効期間の違いがもたらす回収戦略の分岐
    2. 時効期間の違いが示す企業経営の優先順位
    3. 実務における致命的な誤り:時効期間の混同による損失
    4. 決算書に反映される時効期間の違い
    5. 時効期間を意識した企業経営の3つの重要原則
    6. 結論:時効期間の違いを理解することが、企業の競争力を決定する

はじめに:売掛金と未収入金を混同するリスク

企業の経理担当者にとって、売掛金と未収入金は最も混同されやすい勘定科目の筆頭です。両者ともに「代金の未回収分」という共通点を持つため、その違いを曖昧なまま処理している企業も少なくありません。しかし、この混同は極めて危険です。

具体的なリスク

  • 売上高が過大に計上され、経営判断が誤る
  • 決算書の信頼性が低下し、融資審査で不利になる
  • 税務調査で指摘を受け、追加税金が発生する
  • 経営層への報告書が不正確になり、戦略立案に支障が生じる

本記事では、売掛金と未収入金の本質的な違いから、実務での判断基準、会計処理、決算時の注意点まで、企業経営に直結する知識を解説します。

売掛金と未収入金の定義|最初に押さえるべき基礎

売掛金の正確な定義

売掛金は、企業の本業の営業活動から発生した未回収の代金を計上する勘定科目です。

具体的な発生場面

  • 小売業が商品を掛けで販売した場合
  • 卸売業が商品を納品後、請求する場合
  • IT企業がシステム開発サービスを提供し、代金を後払いにする場合
  • 建設業が工事を完成させて、請求書を発行した場合

最も重要な特徴

売掛金は企業の主たる営業活動から生じるため、損益計算書の「売上高」に対応する債権です。営業成績を示す最も重要な指標となります。

未収入金の正確な定義

未収入金は、企業の本業以外の取引から発生した未回収の代金を計上する勘定科目です。

具体的な発生場面

  • 製造業が使用しなくなった機械設備を売却し、代金が後払い
  • 商社が保有する有価証券を売却し、決済が後日
  • 不動産会社が所有していない土地・建物を他社に貸し付ける場合
  • 企業が固定資産の売却で発生した一時的な収益
最も重要な特徴

未収入金は臨時的・単発的な取引から生じるため、損益計算書の「営業外収益」または「特別利益」に対応する債権です。営業成績とは無関係な取引の債権です。

売掛金と未収入金の決定的な違い:5つのポイント

両者の違いを正確に理解するために、5つの主要なポイントを比較します。

ポイント1:取引の性質「本業かどうか」

項目 売掛金 未収入金
取引の性質 本業の営業活動 本業以外の臨時取引
頻度 継続的・反復的 一時的・単発的
定款の事業目的 含まれる 含まれない場合が多い

判断の要点

企業の定款に記載された事業目的に含まれるかどうかが、最初の判断基準になります。

実例

製造業が自社製品を販売した場合 → 売掛金。製造業が自社の社用車を売却した場合 → 未収入金。

ポイント2:損益計算書上の分類

項目 売掛金 未収入金
対応する勘定科目 売上 雑収入・営業外収益・特別利益
営業成績への反映 営業利益に含まれる 営業利益に含まれない
経常利益への反映 営業利益に含まれる 営業外収益の場合は経常利益に含まれる

判断の要点

「この取引の相手勘定は『売上』か、それ以外か」で判断します。

ポイント3:貸借対照表上の分類

項目 売掛金 未収入金
常時の分類 流動資産(1年以内) 回収期限により異なる
1年超の場合 流動資産のまま表示 長期未収入金(固定資産)
理由 営業サイクルに基づく ワンイヤールール適用

注意点

売掛金は、回収予定が1年超であっても、営業サイクルの一部と考えられるため、流動資産として表示される場合があります。一方、未収入金は厳格にワンイヤールールが適用されます。

ポイント4:回収管理の方法

項目 売掛金 未収入金
管理体制 営業部門と経理部門が連携 個別案件ごとに管理
回収サイト 標準化されている(30日、60日など) 契約ごとに異なる
督促体制 定期的・自動的 案件に応じて対応
リスク評価 定期的な与信審査 個別の信用状況確認

実務上の重要性

売掛金は営業サイクルの中で自動的に回収される仕組みになっていますが、未収入金は契約内容に基づいて個別に対応する必要があります。

ポイント5:消費税の取扱い

項目 売掛金 未収入金
消費税 課税売上 取引内容による
処理方法 通常の課税売上として処理 固定資産売却は不課税、賃貸は課税など内容により異なる
仕入税額控除 可能 一部取引は控除不可

実務上の注意

未収入金の消費税処理を誤ると、消費税申告書の信頼性が低下します。
取引内容ごとに確認が必須です。

業種別での売掛金と未収入金の判断

同じ取引内容でも、企業の業種によって勘定科目が変わるケースがあります。これが、売掛金と未収入金の判断を困難にしている大きな理由です。

ケース1:車両(自動車)の売却

業種 取引内容 勘定科目 理由
中古車販売業 顧客に車両を販売し、代金が未収 売掛金 本業の営業活動
製造業 社用車を廃車業者に売却し、代金が未収 未収入金 本業外の臨時取引
レンタカー業 使用済みレンタカーを中古車業者に売却 売掛金 または 営業外収益 本業に準ずる活動
運送業 配送用トラックを売却し、代金が未収 未収入金 本業外の臨時取引

判断の極意

「その企業の定款に記載された事業目的に含まれるか」が最大の判断基準です。

ケース2:不動産(土地・建物)の賃貸

業種 取引内容 勘定科目 理由
不動産賃貸業 テナントに建物を貸し付け、賃料が未収 売掛金 (または未収入金) 本業の営業活動
製造業 余剰敷地を駐車場として貸し付け、賃料が未収 未収入金 本業外の臨時取引
商社 オフィスビルの一部を転貸し、賃料が未収 売掛金 事業目的に合致

重要な注意

不動産賃貸業の場合、売掛金とされることもあれば、未収入金とされることもあります。業界慣行と企業の会計方針に基づいて判断します。

ケース3:有価証券(株式・債券)の売却

業種 取引内容 勘定科目 理由
証券会社 顧客に株式を販売し、代金が未収 売掛金 本業の営業活動
製造業 保有する有価証券を売却し、代金が未収 未収入金 本業外の投資活動
金融機関 投資信託を販売し、代金が未収 売掛金 本業の営業活動

売掛金と未収入金の仕訳の違い

勘定科目を正確に判断した後、仕訳をする際にも大きな違いがあります。

売掛金の仕訳パターン

パターンA:通常の商品販売時
(借方) 売掛金 100,000円 / (貸方) 売上 100,000円

パターンB:入金時
(借方) 普通預金 100,000円 / (貸方) 売掛金 100,000円

パターンC:貸倒れが発生した場合
(借方) 貸倒損失 100,000円 / (貸方) 売掛金 100,000円

未収入金の仕訳パターン

パターンA:本業外の余剰品販売時
(借方) 未収入金 100,000円 / (貸方) 雑収入 100,000円

パターンB:固定資産売却時(間接法)
(借方) 未収入金 450,000円 / (貸方) 機械装置 500,000円
(借方) 減価償却累計額 100,000円 / (貸方) 固定資産売却益 50,000円

パターンC:入金時
(借方) 普通預金 100,000円 / (貸方) 未収入金 100,000円

最も大きな違い

売掛金の相手勘定は「売上」ですが、未収入金の相手勘定は「雑収入」「固定資産」「有価証券」など、取引内容により大きく異なります。

売掛金と未収入金の共通点と相違点まとめ

共通点

両者ともに以下の特性を持ちます。
1. 資産科目である – 貸借対照表の資産の部に計上される
2. 将来の現金受取を表す – 未収の代金である
3. 短期的に回収される – 通常1年以内の回収が見込まれる
4. 発生主義で処理される – 現金受領時ではなく、取引発生時に計上
5. 貸倒リスクがある – 回収不能のリスクを評価する必要がある

相違点

特性 売掛金 未収入金
発生源 本業 本業以外
取引の頻度 継続的 一時的
損益計算書との対応 売上 営業外収益・特別利益
経営成績への影響 営業利益を形成 営業利益に影響しない
相手勘定 売上に固定 取引内容による
回収管理 営業サイクルで管理 個別案件で管理
1年超の場合の分類 流動資産のまま 長期未収入金(固定資産)

売掛金と未収入金の判断フローチャート

実務で迷った場合は、以下のフローチャートに沿って判断してください。
取引が発生した

① その取引は定款に記載された本業か?

YES → 売掛金

NO → 次へ

② その取引は継続的・反復的に行われるか?

YES → 売掛金(本業に準ずる取引)

NO → 次へ

③ その取引の相手勘定は「売上」か?

YES → 売掛金

NO → 未収入金

④ 継続的なサービス提供による利息等か?

YES → 未収収益

NO → 未収入金

実務的なポイント

このフローチャートを経理部門全体で共有し、判断の統一を図ることが重要です。

決算処理での売掛金と未収入金の取扱い

売掛金の決算処理

1. 貸倒引当金の計上

企業会計基準では、売掛金に対して適切な貸倒引当金を計上することが求められます。

(借方) 貸倒引当金繰入 50,000円 / (貸方) 貸倒引当金 50,000円

計算方法:売掛金の合計 × 過去の貸倒実績率 = 貸倒引当金
例:売掛金1,000万円 × 0.5% = 50,000円

2. 回収不能売掛金の処理

確実に回収不能と判断された場合:

(借方) 貸倒損失 XXX円 / (貸方) 売掛金 XXX円

または、既に引当金を計上していた場合:
(借方) 貸倒引当金 XXX円 / (貸方) 売掛金 XXX円

未収入金の決算処理

1. 長期未収入金への振替

回収予定が1年超の場合:
(借方) 長期未収入金 500,000円 / (貸方) 未収入金 500,000円

2. 貸倒引当金の計上

売掛金ほど厳密には求められませんが、回収リスクがある場合は計上を検討:
(借方) 貸倒引当金繰入 200,000円 / (貸方) 貸倒引当金 200,000円

3. 回収予定経過の確認

決算時に、以下の項目を確認することが重要です:

  • ☑ 回収予定期日が経過している未収入金はないか?
  • ☑ 取引先の信用状況に変化はないか?
  • ☑ 分割払いの未収入金は適切に振り分けられているか?
  • ☑ 法的な相殺要件を満たす買掛金との相殺がないか?

売掛金と未収入金の回収管理の違い

売掛金の回収管理

営業サイクルに基づいた管理

  • 事前予防 – 取引前の与信審査
  • 取引中 – 定期的な支払い状況モニタリング
  • 期末対応 – 決算日ごとの回収状況確認
  • 事後対応 – 貸倒れ発生時の損失処理

管理ツール

  • 売掛金管理簿
  • 入金予定表
  • 与信限度額管理表
  • 滞留債権レポート

未収入金の回収管理

個別案件ベースの管理

  • 売却契約時 – 契約内容の詳細確認(支払日、分割金額など)
  • 決算時 – 回収予定表の作成
  • 入金管理 – 分割払い時は各回の入金確認
  • 長期化対応 – 1年超は固定資産化、リスク評価

管理ツール

  • 固定資産売却台帳
  • 未収入金回収予定表
  • 取引先信用情報ファイル

売掛金と未収入金の融資審査への影響

金融機関が融資審査を行う際、売掛金と未収入金は異なる評価を受けます。

売掛金が融資審査に与える影響

プラス評価

  • 営業活動が活発であることを示す
  • 売掛金回転率が良好であれば、回収サイクルが短いことを示す
  • 営業利益に直結するため、企業の稼ぐ力を反映

マイナス評価

  • 売掛金が急増している場合、回収困難のシグナル
  • 売掛金回転日数が業界平均より大幅に長い場合、信用状況の悪化を示唆
  • 特定顧客への売掛金集中は経営リスク

未収入金が融資審査に与える影響

中立的評価

  • 本業以外の取引のため、営業成績には影響しない
  • 臨時的な資産として位置づけられる
  • 融資可能額の計算では、資産として限定的に評価

マイナス評価

  • 回収予定が明確でない場合は、回収リスク評価が厳しい
  • 1年超の長期未収入金は、資金化が困難と判断される可能性
  • 金融機関によっては、不動産売却代金の未収は「売却が完了していない」と判断される場合がある

融資審査での一般的な見方

売掛金の質(回転率、滞留期間)は、融資判断に大きく影響します。一方、未収入金は補助的な指標として扱われることが多いです。

実務Q&A:売掛金と未収入金でよくある質問

Q1:不動産賃貸業の場合、家賃は売掛金ですか、未収入金ですか?

A: 本業が不動産賃貸業であれば、家賃は売掛金として処理します。定款に「不動産の賃貸業」が記載されていることが前提です。
ただし、製造業が余剰敷地を駐車場として貸す場合は、未収入金です。

Q2:分割払いで固定資産を売却した場合、毎年末の処理はどうするのですか?

A: 以下の通り処理します:

1年目末:
(借方) 長期未収入金 XXX円 / (貸方) 未収入金 XXX円

2年目末に1年目分が入金された場合:
(借方) 普通預金 XXX円 / (貸方) 未収入金 XXX円

残る分割払い分は引き続き長期未収入金として固定資産に分類されます。

Q3:役員に貸し付けた金銭の利息が未収の場合、未収入金ですか?

A: いいえ。利息は継続的に発生する性質を持つため、未収収益として処理します。未収入金ではありません。
(借方) 未収収益 XXX円 / (貸方) 受取利息 XXX円

Q4:売掛金と未収入金の両方がある場合、相殺できますか?

A: はい、相殺は可能ですが、法的要件を満たす必要があります

  • 取引の当事者同士が相殺に同意していること
  • 双方が同じ種類の債権を保有していること
  • 相殺が法的に有効であること

相殺する場合の仕訳:
(借方) 買掛金 XXX円 / (貸方) 売掛金またはその他債権 XXX円

ただし、相殺に法的リスクがある場合は、税理士や弁護士に相談してください。

Q5:消費税の取扱いは売掛金と未収入金で同じですか?

A: いいえ。異なります:

売掛金

通常の課税売上として消費税が課税される

(借方) 売掛金 110,000円 / (貸方) 売上 100,000円
/ (貸方) 仮受消費税 10,000円

未収入金

取引内容による

  • 固定資産売却 → 不課税(消費税なし)
  • 不動産貸付 → 課税(消費税あり)
  • 有価証券売却 → 不課税(消費税なし)

売掛金と未収入金の時効期間

両者の時効期間も異なります。これは回収戦略に影響します。

売掛金の時効期間

商取引債権

2年間
商品やサービスの代金に関する売掛金は、2年の時効期間があります。

時効の起算点

最後の履行期日の翌日から起算

未収入金の時効期間

一般債権

5年間(民法改正により2020年4月以降)
固定資産の売却代金などの未収入金は、5年の時効期間があります。

重要な違い

売掛金は2年、未収入金は5年という異なる時効期間があるため、回収督促のタイミングが異なります。

売掛金と未収入金の時効期間の違いから見える経営戦略の本質

売掛金と未収入金の時効期間が異なる(売掛金2年、未収入金5年)という事実は、単なる法律知識ではなく、企業の経営戦略そのものに大きな影響を与える重要な要素です。

時効期間の違いがもたらす回収戦略の分岐

売掛金(2年時効)の回収戦略

時効期間が2年と短いため、企業は急速な回収活動を強いられます。支払期日から6ヶ月を経過した時点で、既に時効期間の4分の1が消費されているという現実があります。

この緊迫感が、以下の経営行動を促進します。

  • 営業部門への回収圧力の強化
  • 与信管理基準の厳格化
  • 自動督促システムの導入
  • 支払期日短縮化への営業活動

企業がこれらの施策を実行できなければ、毎年相当額の貸倒損失が発生し、利益を圧迫することになります。

未収入金(5年時効)の回収戦略

時効期間が5年と長いため、企業は段階的で柔軟な回収対応が可能です。固定資産の分割払い売却では、この5年の猶予が最大の武器になります。

  • 長期的な分割払い交渉が可能
  • 相手方の経営困難に対する猶予が取りやすい
  • 法的手段の検討に充分な時間がある
  • 時効中断措置の実施タイミングを戦略的に判断できる

しかし、この柔軟性に甘えて管理を怠ると、4年経過時点で「時効まで残り1年」という状況に至り、慌てて回収対応を開始することになります。

時効期間の違いが示す企業経営の優先順位

この時効期間の違いは、企業経営における優先順位を明確に示しています。

売掛金

企業存続の要 → 短期回収が必須

売掛金の時効が2年と短く設定されているのは、本業から発生する売掛金の回収が、企業の継続的な営業活動に不可欠だからです。売掛金の滞留は、即座に資金繰りを悪化させ、企業の生存戦略に関わります。
すべての企業が売掛金の2年時効を意識して、営業サイクルの最短化に取り組む必要があります。

未収入金

経営基盤の強化策 → 中期的な対応で十分

未収入金の時効が5年と長く設定されているのは、本業以外の臨時的な取引であり、直ちに企業の存続を脅かさないからです。ただし、だからこそ管理が後回しにされやすく、時効完成直前に「回収不可能」が判明するという経営ミスが発生しやすいのです。

実務における致命的な誤り:時効期間の混同による損失

誤り1:未収入金を売掛金同様に2年で処理してしまう

多くの経理担当者が犯す誤りが、未収入金も「2年で回収しなければならない」と思い込むことです。この誤りにより:

  • 2年経過時点で、本来は3年の猶予がまだあるにもかかわらず、貸倒損失として認識してしまう
  • 決算書に不要な損失が計上され、利益が過小に表示される
  • 経営判断に基づいて立てた回収計画が、実は時効法上は保護されていなかったことが後で判明する
正しい対応

未収入金は5年の時効期間を前提として、少なくとも3年~4年の管理期間を組み込んだ回収戦略を構築すること。

誤り2:売掛金の時効を過信してしまう

逆の誤りもあります。「売掛金は2年まで有効だから、2年以内なら安心」という誤った理解です。この誤りにより:

  • 時効期間内に時効を中断する措置を講じず、相手方が時効を援用して突然債権が消滅
  • 月末に期限が切れる売掛金が複数ある場合、その月の督促漏れで数百万円の債権が時効消滅
  • 相手方が倒産した際、既に時効期間が経過していて、破産債権として扱われない
正しい対応

売掛金は2年以内に必ず時効を中断させる措置(支払督促、訴訟、内容証明郵便など)を講じること。時効期間内に回収できなかった売掛金は、積極的に法的対応を行うべき危険信号。

決算書に反映される時効期間の違い

時効期間の違いは、最終的に決算書に大きな影響を与えます。

売掛金(2年時効)の決算書上の扱い

決算年:売掛金残高 100,000,000円
うち2年経過額 5,000,000円
→ 貸倒損失として損益計算書に計上
結果:営業外費用増加 → 最終利益が5,000万円減少

企業は毎年、売掛金の2年経過分を監視し、時効完成前に積極的に回収活動を行わなければなりません。

未収入金(5年時効)の決算書上の扱い

決算年:未収入金残高 50,000,000円
うち2年経過額 10,000,000円
→ 貸倒引当金として計上(未確定なため)
結果:営業外費用増加は貸倒引当金として、確定ではなく見積計上

企業は、5年の時効期間を活用して、段階的に回収対応を行う余裕があります。ただし、5年経過時点での最終判定では、貸倒損失として確定計上されます。

時効期間を意識した企業経営の3つの重要原則

原則1:売掛金は「回収リスク管理の最優先課題」

売掛金の2年時効は、企業に以下の戦略的対応を強制します。

  • 営業サイクルの短縮化 – 30日サイト、60日サイトの厳守
  • 与信審査の厳格化 – 新規顧客開拓時の信用調査の徹底
  • 自動督促システムの導入 – 人為的なミスを排除
  • 月次の滞留債権レポート作成 – 経営層への定期報告

これらを実行しない企業は、毎期相当額の時効消滅による貸倒損失を被ることになります。

原則2:未収入金は「戦略的な長期管理が可能」

未収入金の5年時効は、企業に以下の経営的な柔軟性をもたらします。

  • 分割払い交渉の活用 – 相手方の経営状況に応じた柔軟な支払い条件設定
  • 中期経営計画への組み込み – 3年~5年の経営計画の中で回収予定を明示
  • 法的対応の慎重な検討 – 訴訟のタイミングを戦略的に判断
  • 相手方とのwin-win交渉 – 相手方の企業再生を支援しながら回収を目指す

ただし、この柔軟性に甘えて管理を怠ることは最大の経営ミスです。

原則3:時効管理は「システム化と経営層の関与」が不可欠

時効期間の違いを正確に管理するためには、以下の2つが必須です。

システム化の必要性
  • 会計ソフトで自動計算される時効期限の設定
  • 月次レポートでの時効リスク可視化
  • 各勘定科目ごとの時効期限アラート機能
経営層の関与の必要性
  • 月次経営会議での滞留債権報告
  • 特別な対応が必要な案件への経営層の判断
  • 法的対応の最終的な意思決定

結論:時効期間の違いを理解することが、企業の競争力を決定する

売掛金(2年)と未収入金(5年)の時効期間の違いを正確に理解し、それぞれに適切な回収戦略を構築できる企業は

  • 資金繰りが安定している – 計画的な現金流入によるキャッシュフロー経営
  • 与信管理が厳密である – 回収困難なリスクを事前に排除
  • 決算書の信頼性が高い – 時効による不測の損失がない
  • 経営判断が的確である – 正確な財務情報に基づいた戦略立案

これらの企業は、金融機関からの信頼も厚く、融資を受ける際の条件も有利になります。
逆に、時効期間を軽視し、管理体制が曖昧な企業は

  • 突然の貸倒損失で決算書が悪化 – 時効消滅による予想外の損失計上
  • 金融機関の信頼低下 – 融資審査が厳しくなり、融資金利が上昇
  • 経営判断の誤り – 不正確な財務情報に基づいた戦略立案
  • 資金繰り危機の発生 – 回収予定の現金が確実でなくなる

企業の経営品質を測る隠れた指標として、時効管理の体制整備度は極めて重要です。
売掛金と未収入金の時効期間の違いを正確に理解し、それぞれに適切な管理体制を構築することで、初めて企業の経営基盤が強化されます。

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