資金繰りの改善を検討する際、ファクタリングと手形割引のどちらを選ぶべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
近年は紙の約束手形が廃止される影響で、従来の資金調達手段の見直しが進んでいます。
本記事では、ファクタリングと手形割引の違いを分かりやすく整理し、メリット・デメリットや向いているケースを解説します。
資金調達方法の選択で失敗したくない方は、最後までご覧ください。
監修者プロフィール
税理士法人浅野会計事務所は、愛知県清須市にあり、創業40年以上、経営・金融・税務・会計・労務のスペシャリストとして各種サポートを行っています。代表の浅野芳郎をはじめ、税理士4名、行政書士1名、社会保険労務士1名ほかファイナンシャルプランナー、宅建資格の資格保持者などもおり、長く経営するためのサポート体制を整えています。
ファクタリングと手形割引の9つの違い
ファクタリングと手形割引の違いは、大きく分けて以下の9つです。
- 現金化の対象
- 償還義務
- 貸金業法の適用
- 手数料・金利
- 審査基準
- 資金調達のスピード感
- 取引先への通知
- 決算書への影響
- 必要書類
詳細を見ていきましょう。
1. 現金化の対象
ファクタリングでは、商品やサービスの提供後に発生する売掛金(売掛債権)を売却して資金化します。
掛取引によって生じた将来の入金予定を、前倒しで現金化する仕組みです。
一方、手形割引で現金化の対象となるのは、紙または電子の受取手形(約束手形)です。
金融機関や割引業者に手形を持ち込み、割り引くことで資金を得られます。
手形は発行時に一定の信用審査を経るうえ、不渡りを出すと銀行取引停止などの重いペナルティを科されることが一般的です。
そのため、売掛金よりも支払履行へのプレッシャーが強いといわれています。
2. 償還請求権の有無
償還請求権は、売掛先が倒産するなどして債権を回収できなかった場合に、資金を受け取った利用者に返済を求める権利です。
ファクタリングでは、多くの場合「償還請求権なし(ノンリコース)」契約となります。
売掛債権をファクタリング会社へ譲渡するため、万が一売掛先が支払不能になっても、利用企業が代わりに弁済する必要はありません。
資金繰りだけでなく、貸し倒れリスクの回避という点でもメリットがあります。
一方、手形割引は通常「償還請求権あり(リコース)」の取引です。
たとえば、受取手形を割り引いて資金化したあと、振出人が満期に支払えず不渡りとなったとします。
この場合、割引を依頼した企業が金融機関や割引業者へ買い戻し(返済)を行わなければなりません。
3. 貸金業法の適用
貸金業法は、金銭の貸付を行う業者に対して登録義務や金利上限などのルールを定め、利用者を保護するための法律です。
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社へ売却する債権譲渡取引と位置づけられます。
融資ではないため、原則として貸金業法の適用を受けません。
一方、手形割引は実質的に「手形を担保とした融資(貸付)」とみなされる取引です。
そのため、銀行以外の業者が行う場合は貸金業法の規制対象となり、貸金業登録が必要になります。
また、割引料に含まれる金利相当部分には上限規制が及ぶ点も特徴です。
このような法的な位置づけの違いは、手数料体系や業者の参入要件に影響しています。
4. 手数料・金利
ファクタリングの手数料は、売掛金額に対して一定の料率を掛けて算出されます。
相場は、以下のように2社間ファクタリングのほうが高くなることが一般的です。
- 3社間ファクタリング:1〜9%程度
- 2社間ファクタリング:8〜18%程度
一方、手形割引では年利ベースの割引料が適用されます。
銀行を利用する場合は年利1〜5%程度、貸金業者では年利5〜20%程度が1つの目安です。
一般的には、手形割引よりもファクタリングのほうが割高になりやすいでしょう。
ただし、3社間ファクタリングで売掛先の信用力が高い場合などは、手形割引以下のコストに収まるケースもあります。
5. 審査基準
ファクタリングにおいて、審査では売掛先(取引先)の信用力が重視されます。
そのため、以下のような企業でも活用しやすいことが特徴です。
- 赤字決算や債務超過の状態にある企業
- 銀行融資が難しい中小企業
- 創業間もない事業者
一方、手形割引は実質的に融資取引に近いため、利用企業と手形振出人の双方の信用力がチェックされる傾向にあります。
とくに銀行での手形割引は、ファクタリングより審査のハードルが高くなるケースも少なくありません。
6. 資金調達のスピード感
ファクタリングにおける現金化スピードの目安は、以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング:最短即日
- 3社間ファクタリング:最短2営業日程度
一方、銀行の手形割引を利用する場合は、資金化まで数日〜1週間程度かかるケースが一般的です。
専門業者であれば、最短即日での資金化に対応していることもあります。
緊急の資金ニーズがある場合は、手続きの簡便さも含めてファクタリングが選ばれやすい傾向にあります。
7. 取引先への通知
手形割引は、原則として取引先への通知や承諾が不要です。
受取手形を金融機関や割引業者に持ち込んで資金化する仕組みのため、通常は振出人へ連絡が入ることはありません。
2社間ファクタリングの場合も、利用企業とファクタリング会社の間で契約が完結するため、基本的に売掛先への通知は行われません。
資金調達を外部に知られたくない企業にとっては利用しやすい方式といえます。
一方、3社間ファクタリングでは売掛先の承諾が必要となり、債権譲渡の事実が取引先に通知されます。
取引先に「資金繰りに余裕がないのでは」といった印象を与える懸念もあるため、関係性への影響を考慮する必要があるでしょう。
8. 決算書への影響
ファクタリングは借入ではないため、利用しても貸借対照表上の負債に計上されることがありません。
一方、手形割引は実質的に借入扱いとなるため、資金化すると割引手形として流動負債に計上されます。
貸借対照表上の負債が増えれば、金融機関から融資を受ける際の審査に影響を与えかねません。
とくに、短期間で複数回の手形割引を行うと負債圧縮の余地が減り、財務状況を不安視される懸念があります。
9. 必要書類
ファクタリングと手形割引では、資金化に必要な書類が以下のように異なります。
| ファクタリング | 手形割引 |
|---|---|
|
|
ファクタリングは売掛債権の存在証明が中心であるのに対し、手形割引は手形と信用情報の裏付けが重視されます。
ファクタリングのメリット・デメリット
手形割引と比較すると、ファクタリングには以下のメリット・デメリットがあります。
- メリット1. 未回収リスクを回避できる
- メリット2. 信用情報に影響がない
- デメリット1. 手数料が高い
- デメリット2. 資金調達の範囲が限定される
それぞれ見ていきましょう。
メリット1. 未回収リスクを回避できる
ファクタリングは融資ではなく、売掛債権そのものをファクタリング会社に売却する仕組みです。
そのため、取引先が支払不能に陥っても、利用者がその分を弁済する義務はありません。
ただし、支払遅延の売掛金や回収困難な債権は、ファクタリングに利用できないケースがあります。
また、ファクタリング会社によっては償還請求権付きの契約を扱う場合もあるため、契約前に償還請求権の有無を必ず確認しましょう。
メリット2. 信用情報に影響がない
銀行や消費者金融から融資を受けると、貸借対照表上では借入金として計上されます。
信用情報にも記録が残るため、返済遅延や債務超過の履歴がある場合、今後の融資審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方で、ファクタリングは売掛債権の売却による資金調達であり、貸借対照表上で借入金として扱われません。
ほとんどのファクタリング会社は信用情報機関に加盟していないため、利用履歴が信用情報に記録されることもありません。
将来の融資審査にマイナスの影響を与えない点が、ファクタリングならではのメリットといえます。
迅速な現金化が可能
ファクタリングはオンライン完結型のサービスが多く、スピーディな資金調達が可能です。
最短即日での入金に対応している業者も少なくありません。
審査が比較的短時間で完了するため、資金繰りの改善やキャッシュフローの安定化に向けた短期的な資金確保手段として有効です。
デメリット1. 手数料が高い
ファクタリングは、手形割引と比較すると手数料が高い傾向にあります。
| 取引手段 | 手数料の相場 |
|---|---|
| 2社間ファクタリング | 8〜18%程度 |
| 3社間ファクタリング | 1〜9%程度 |
| 手形割引 |
|
たとえば、支払期日1ヶ月後の500万円の取引を資金化するケースでは、手数料に以下のような違いが生じます。
- ファクタリング:50万円程度(手数料率10%の場合)
- 手形割引:4万円程度(年利10%の場合)
とはいえ、手形割引は支払期日が長くなるほど割引料が高くなります。
短期の資金調達では、ファクタリングのメリットが手数料の高さを上回るケースもあるでしょう。
ファクタリングを利用する際は、手数料の水準や契約形態、取引条件に応じて総合的に判断することが大切です。
デメリット2. 資金調達の範囲が限定される
ファクタリングでは、売掛金の額面から手数料を差し引いた金額が振り込まれます。
そのため、売掛金の全額を資金として受け取ることはできません。
さらに、売掛金以上の資金を調達することも原則不可能です。
とはいえ、手形の額面が資金化できる上限となる点は、手形割引も同様です。
売掛金以上のキャッシュを確保したい場合には、銀行融資やビジネスローンなど別の資金調達手段を併用する必要があるでしょう。
売掛先の承諾を得る必要がある(3社間)
3社間ファクタリングを利用する場合は、資金調達の事実が取引先に知られることになります。
売掛先に対し、債権譲渡の通知や承諾を得る必要があるためです。
企業によっては、資金繰りの状況を知られることで信用面に影響が出ることを懸念するケースもあります。
状況に応じて、売掛先の関洋が不要な2社間ファクタリングを検討することも1つの選択肢です。
手形割引のメリット・デメリット
続いて、ファクタリングと比較した際の手形割引のメリット・デメリットを見ていきましょう。
- メリット:取引先に知られる心配がない
- デメリット:不渡りのリスクがある
それぞれ解説します。
メリット:取引先に知られる心配がない
3社間ファクタリングは、利用時に取引先の承諾が必要となります。
ファクタリングにネガティブな印象を抱いている企業の場合、今後の関係性に悪影響を与えてしまう懸念もあるでしょう。
対して手形割引では、約束手形を割引業者や銀行に持ち込むだけで現金化できるため、売掛先の承諾を得る必要がありません。
取引先に不安を与えることなく資金調達できる点がメリットです。
デメリット:不渡りのリスクがある
手形割引には償還請求権があるため、手形振出人が支払不能になった場合、割引を依頼した企業が手形の全額を支払う義務を負います。
つまり、貸し倒れリスクが依頼者に移る形です。
また、手形は分割して現金化しにくい側面もあります。
たとえば、100万円の手形を持っていて50万円だけ資金が必要な場合でも、基本的には100万円全額を割引しなければなりません。
手形割引には、不渡りのリスクや資金調達の柔軟性に制限があることを押さえておきましょう。
ファクタリングと手形割引に共通するメリット・デメリット
ファクタリングと手形割引は仕組みに違いがありますが、どちらも「入金予定の債権を現金化する」手段です。
両者共通のメリットは、入金期日を待たずに資金化でき、資金繰りの改善や急な支払いへの対応がしやすくなることです。
また、担保や保証人を必要としないケースが多く、比較的利用しやすい資金調達手段であることも共通しています。
一方、手数料や割引料などのコストが発生する点には注意が必要です。
売掛先や振出人の信用力によって利用可否が判断されたり、条件が左右されたりする点も共通のデメリットといえます。
両者のコストやリスク、取引条件をふまえたうえで、自社の状況に適した方法を選ぶことが大切です。
紙の約束手形は2026年度末に廃止予定
約束手形は、企業間取引の主要な決済手段として利用されてきました。
しかし、2027年3月末までに紙の手形・小切手の交換が廃止されます。
背景にあるのは、支払サイトの長期化による資金繰り負担、紙手形の紛失リスク、事務処理の煩雑さなどの課題です。
加えて、銀行振込や電子決済の普及といった決済手段の多様化も、手形廃止の流れを後押ししています。
紙の約束手形に依存している企業は、早めの対応が求められるでしょう。
電子記録債権(でんさい)への移行と影響
一方、代替手段として普及が進んでいるのが電子記録債権(でんさい)です。
でんさいは電子データで管理される債権で、譲渡や割引によって資金化できる点は手形と共通しています。
ただし、一般的にでんさい割引には償還請求権が付くため、支払企業が倒産した場合は利用者が支払義務を負います。
この点が、償還請求権なしで利用できるケースが多いファクタリングとの違いです。
以上の背景から、約束手形の廃止後はファクタリングやでんさいなど複数の手段を組み合わせることが有効といえます。
参考:紙の手形・小切手利用廃止へ|一般社団法人 全国銀行協会
まとめ:手形に代わる資金調達方法としてファクタリングが有効
手形割引は取引先に知られにくい一方、不渡り時の返済義務がある点や、約束手形の廃止により利用機会が縮小する点に注意が必要です。
一方、ファクタリングは売掛債権を早期に資金化でき、貸し倒れリスク回避の観点でも強みがあります。
手数料には注意する必要があるものの、資金繰り改善の有力な選択肢であることは間違いありません。
ファクタリングの活用を検討する際は、実績が豊富で信頼できる会社を選ぶことが大切です。
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資金繰りの選択肢として、ぜひ比較検討してみてはいかがでしょうか。
