給料日前に資金を確保できる「給料ファクタリング」ですが、仕組みやリスクを正しく理解している方は多くありません。
実際には貸付と判断されるケースもあり、利用方法を誤ると高額な手数料やトラブルに発展する可能性があります。
本記事では、給料ファクタリングの仕組みや違法性が指摘されている理由、安全に資金を確保するための代替手段を解説します。
資金繰りに不安を感じている方や、利用を検討している方は参考にしてください。
監修者プロフィール
税理士法人浅野会計事務所は、愛知県清須市にあり、創業40年以上、経営・金融・税務・会計・労務のスペシャリストとして各種サポートを行っています。代表の浅野芳郎をはじめ、税理士4名、行政書士1名、社会保険労務士1名ほかファイナンシャルプランナー、宅建資格の資格保持者などもおり、長く経営するためのサポート体制を整えています。
給料ファクタリングとは?
給料ファクタリングは、会社員でも少額から利用できる資金調達方法として知られています。
まずは基礎知識を確認していきましょう。
- 給与を「債権」とみなして早期に現金化する仕組み
- 給与前払いサービスとは異なる
- ファクタリングは「借金ではない」のが重要ポイント
それぞれ解説します。
給与を「債権」とみなして早期に現金化する仕組み
将来受け取る予定の給与を「給与債権」とみなして業者に買い取ってもらい、給料日前に現金を受け取る資金調達手法です。
利用者は、勤務先から支払われる予定の給与額を基準に業者へ申し込み、審査後に手数料を差し引いた金額を受け取ります。
給料日前に現金を確保できるため、急な出費などで手元資金が不足した際に利用を検討する方もいるでしょう。
ただし、貸金業登録を受けずに給料ファクタリングを行う違法業者もおり、金融庁や警察が注意喚起を行っています。
とくに高額な手数料の負担が問題視されているため、安易な利用は避けましょう。
給与前払いサービスとは異なる
給与前払いサービスは、企業が福利厚生の一環として導入する正式な給与支払いの仕組みです。
従業員はすでに働いた分の給与の範囲内で、給料日前に一部の金銭を受け取れます。
受け取るお金はあくまで給与であり、外部業者に債権を売却して現金化する「給料ファクタリング」とは性質が異なります。
給与前払いサービスは、勤務先企業が導入していなければ利用できませんが、安易に給料ファクタリングへ頼るのは危険です。
資金繰りに不安がある場合、まずは勤務先に相談してみることをおすすめします。
ファクタリングは「借金ではない」のが重要ポイント
一般的なファクタリングは、あくまで「債権の売買」によって資金を調達する仕組みです。
通常の借入であれば返済義務が発生し、信用情報にも影響を及しますが、ファクタリングは負債として扱われません。
そのため、企業の資金繰り改善などにも広く活用されている合法的な資金調達手段といえます。
ただし、給料ファクタリングに関しては注意が必要です。
仕組み上は債権譲渡であっても、実態は「給与を担保にした貸付」と判断されるケースもあります。
表面的な説明だけを鵜呑みにせず、契約内容や取引の実態を十分に確認することが大切です。
給料ファクタリングを利用する手順
給料ファクタリングは、申し込みから現金化までの流れが比較的シンプルで、オンラインだけで完結するケースも少なくありません。
一般的な利用手順は、以下のとおりです。
- 利用手順1:ファクタリング会社に申し込む
- 利用手順2:ファクタリング会社によって審査が行われる
- 利用手順3:審査通過後、ファクタリング会社と契約を締結する
- 利用手順4:給与債権の譲渡代金が入金される
- 利用手順5:勤務先から受け取った給与をファクタリング会社へ支払う
それぞれ見ていきましょう。
利用手順1:ファクタリング会社に申し込む
まずは、給料ファクタリングを取り扱う業者へ申し込みを行います。
申し込み時には、以下の書類提出を求められることが一般的です。
- 本人確認書類
- 給与明細
- 雇用契約書など
多くの給料ファクタリングサービスは、スマホやパソコンからオンラインで手続きが完結します。
利用手順2:ファクタリング会社によって審査が行われる
申し込み後は、ファクタリング会社による審査が実施されます。
通常の融資と異なり、信用情報よりも以下の点が重視される傾向です。
- 給与の支給実態
- 勤務先の安定性など
継続的に収入があるかどうかが重要な判断材料となるため、在籍確認が行われる場合もあります。
利用手順3:審査通過後、ファクタリング会社と契約を締結する
審査に通過すると、契約内容の説明を受けたうえで正式に契約を締結します。
とくに、以下の条件は必ず確認しておきましょう。
- 手数料率
- 支払期日
- 支払方法
- 遅延時の対応など
内容を十分に理解しないまま契約してしまうと、後々トラブルに発展するおそれがあります。
利用手順4:給与債権の譲渡代金が入金される
契約が完了すると、給与債権を譲渡した対価として現金が振り込まれます。
早ければ即日で入金されることもありますが、実際に受け取れるのは給与の満額ではない点に注意が必要です。
手数料分だけ実質的な受取額は減少するため、利便性だけでなく総コストもふまえて判断しましょう。
利用手順5:勤務先から受け取った給与をファクタリング会社へ支払う
勤務先から給与が支払われたタイミングで、あらかじめ契約した金額をファクタリング会社へ支払います。
支払いが遅れると追加費用が発生する可能性もあるため、期日は厳守することが大切です。
なお、ここまで解説した一連の流れは、実態として返済に近い構造となっている点も理解しておく必要があります。
給料ファクタリングの違法性が指摘される理由
給料ファクタリングの違法性が各方面で指摘されている理由は、以下の4点に集約されます。
- 実態は「貸付」と変わらない
- 貸金業登録を受けていない業者が存在する
- 法外な利息を請求されるおそれがある
- 違法と認められた判例がある(七福神)
- 金融庁・裁判所が「貸金業にあたる」と判断する場合がある
詳細を見ていきましょう。
実態は「貸付」と変わらない
本来のファクタリングでは、売掛債権を譲渡した時点で、債権回収のリスクも含めてファクタリング会社へ移転します。
仮に取引先から入金がなかった場合でも、利用者が返済義務を負わない「ノンリコース(償還請求権なし)」が一般的です。
一方、給与債権の場合は利用者が業者へ譲渡しても、業者は勤務先から直接的な回収ができません。
労働基準法において、賃金は原則として使用者が労働者本人へ直接支払う義務があると定められているためです。
結果的に、業者は利用者本人から資金を回収します。
つまり、給料ファクタリングは「先にお金を渡し、後日利用者が返す」という貸付と同様の構図です。
実際に金融庁も「経済的に貸付と同様の機能を有しているものは、貸金業に該当するおそれがある」との見解を示しています。
参考:労働基準法第24条|e-Gov 法令検索
参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
貸金業登録を受けていない業者が存在する
給料ファクタリングは「貸付」と評価される可能性が高いため、業務として行う場合は貸金業法に基づく登録が必要です。
しかし実際には、貸金業登録を行わずに営業している業者も散見されます。
無登録業者を利用してしまうと、相場とかけ離れた高額手数料を請求されたり、不適切な取立てを受けたりするリスクがあります。
金融庁や警察も、給料ファクタリングを装ったヤミ金融への注意喚起を行っており、利用者側の警戒が不可欠です。
業者の登録状況は、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で誰でも調べられます。
少しでも不審な点があれば、利用を見送る慎重さが必要です。
法外な利息を請求されるおそれがある
本来、貸付に該当する取引には、利息制限法により上限金利(年15.0~20.0%)が定められています。
しかし中には、月利15~20%(年利換算で180~240%)といった極めて高い手数料を設定している違法業者も存在します。
一般的な消費者金融の上限金利(年18%前後)と比較すると、異常値であることが分かるでしょう。
このような取引にかかわると、わずかな資金不足を解消するつもりが、かえって長期的な資金繰りを悪化させかねません。
金融庁も、無登録業者の利用は生活破綻につながるおそれがあるとして注意喚起を行っています。
違法と認められた判例がある(七福神)
給料ファクタリングの違法性が広く認識される契機となったのが、2021年2月9日の東京地方裁判所判決です。
株式会社ZERUTA(七福神)に対して利用者側が支払い金額の返還を求めた裁判で、同スキームの実態が厳しく判断されました。
本裁判では、利用者9人が支払った総額約430万円の返還を求めて提訴。
裁判所は契約の形式が債権売買である点を踏まえつつも、実質的には金銭の交付と返還の約束を伴う取引であると認定しました。
つまり、表向きはファクタリングでも、実態は貸付と同様であると判断されたのです。
さらに、同社の広告に貸付に近いサービスであることを示唆する内容が含まれていた点も重視されました。
裁判所は、法規制を回避しながら利益を得ていた悪意の受益者にあたると指摘し、利用者に対する支払い金額の全額返還を命じています。
金融庁・裁判所が「貸金業にあたる」と判断する場合がある
給料ファクタリングが債権の売買ではなく「貸付」と評価される可能性が高い理由は、以下のような契約が多く見られるためです。
- 利用者に対して返済義務が課されている
- 給与が支払われなかった際にも利用者本人が支払責任を負う契約になっている
実際、裁判など法的な判断が必要な場面では、形式ではなく「実態」を重視する傾向にあります。
合法的な仕組みに見えても、給料ファクタリングはさまざまなリスクをはらんでいます。
違法性のない業者を利用する場合もリスクあり
仮に貸金業登録を受けた正規業者を利用する場合でも、給料ファクタリングには以下の点で注意が必要です。
- 勤務先や家族への執拗な取り立て被害がある
- 個人情報の売買と犯罪組織への関与リスクがある
- 依存性が高く、多重債務のリスクが高まる
詳細を見ていきましょう。
勤務先や家族への執拗な取り立て被害がある
一見すると適正に運営されている業者でも、支払いが遅れた際に悪質性が露呈する場合もあります。
勤務先や緊急連絡先へ執拗な督促が行われると、職場での信用低下や家庭内トラブルにつながりかねません。
給料ファクタリングは個人を対象とした取引であるため、心理的な負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。
個人情報の売買と犯罪組織への関与リスクがある
申し込み時には、本人確認書類や勤務先情報、口座情報など多くの個人情報を提供する必要があります。
しかし、すべての業者が厳格に情報管理を行っているとは限りません。
管理体制が不十分な場合、個人情報が第三者へ流出したり、別の業者へ転売されたりするリスクがあります。
暴力団や特殊詐欺の犯行グループが関与しているサービスもあるため、給料ファクタリングには厳重な警戒が必要です。
依存性が高く、多重債務のリスクが高まる
資金繰りに困るたびに繰り返し利用してしまうと、多重債務に近い状態になるリスクが高まります。
手数料の総額は利用回数に応じて大きくなり、その分だけ手元に残る給与額が目減りするためです。
根本的な収支改善につながらないまま依存してしまう点は、給料ファクタリングの大きなデメリットといえるでしょう。
給料ファクタリングにおけるトラブルの対処法
給料ファクタリングを利用してトラブルに発展してしまった場合は、早急に以下の対応が必要です。
- 警察に相談する
- 法律の専門家に相談する
- 金融庁の相談窓口を利用する
- 日本貸金業協会や消費生活センターに連絡する
それぞれ解説します。
警察に相談する
悪質な取立てや不審な請求などのトラブルが発生した場合は、放置せず速やかに対応しましょう。
警察では、被害の内容をヒアリングしたうえで、必要に応じて被害届の受理や捜査につなげてもらえる可能性があります。
相談の際は、契約書や振込履歴、業者とのやり取り履歴などを保存して持参すると、状況説明がスムーズに進みます。
最寄りの警察署だけでなく、警察相談専用電話「#9110」の利用も検討するとよいでしょう。
法律の専門家に相談する
トラブルが深刻化している場合は、弁護士や司法書士など法律の専門家へ相談することも有効です。
契約内容や請求額の妥当性を法的観点から判断してもらえるため、自分で対応するよりも安全に解決を目指せます。
弁護士には、交渉代理や訴訟提起などの法的手続きを一任でき、返金請求や支払い停止の交渉を有利に進められる可能性があります。
司法書士は、少額の紛争に関して費用を抑えて相談できる点がメリットです。
事案の緊急度や金額に応じて、適切な専門家を選ぶとよいでしょう。
金融庁の相談窓口を利用する
金融庁が設置している「金融サービス利用者相談室」では、各種金融サービスの説明や注意点、対応方法などを案内してもらえます。
相談は電話やメールで受け付けており、匿名での問い合わせも可能です。
対面相談に抵抗がある方や、公的機関の見解を知りたい方も利用しやすいでしょう。
ただし、金融庁は個別の紛争を直接解決する機関ではありません。
返金交渉や法的手続きが必要なケースでは、専門家への相談と併用することをおすすめします。
日本貸金業協会や消費生活センターに連絡する
日本貸金業協会は貸金業界の自主規制機関であり、貸金業者に対する苦情や紛争の相談を無料で受け付けています。
また、幅広い消費トラブルに対応している消費生活センターへの相談も有効です。
最寄りの窓口が分からない場合は、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すれば、居住地近くの相談窓口を案内してもらえます。
被害が大きくなる前に、公的機関を積極的に活用しましょう。
給料ファクタリングに代わるものは?
一時的に生活資金が不足している場合は、給料ファクタリングの代わりに以下の制度を検討しましょう。
- 生活福祉資金貸付制度
- 総合支援資金
- 臨時特例つなぎ資金貸付
詳細を見ていきましょう。
生活福祉資金貸付制度
生活に不安がある方を支援する貸付制度で、各都道府県の社会福祉協議会が窓口となって運営しています。
民間のサービスと比べて金利が低く、返済負担を抑えながら資金を確保できる可能性があります。
対象となるおもな世帯は、以下のとおりです。
- 低所得世帯:必要な資金を借りることが難しい
- 障害者世帯:障害者手帳等の交付を受けた方が属している
- 高齢者世帯:65歳以上の方が属している
生活福祉資金は、用途に応じて複数の区分が用意されています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 総合支援資金 | 生活再建までの生活費や住宅入居費など |
| 福祉資金 | 療養費・介護関連費用・住宅改修費など |
| 緊急小口資金 | 一時的に生計維持が困難になった場合の少額資金 |
| 教育支援資金 | 子どもの進学に必要な費用 |
| 不動産担保型生活資金 | 高齢者世帯向けの生活資金 |
申請には審査や面談がありますが、違法業者や高金利のサービスを利用する前に検討する価値の高い制度です。
まずは、お住まいの地域の社会福祉協議会に相談してみましょう。
参考:生活にお困りで一時的に資金が必要なかたへ「生活福祉資金貸付制度」があります。|政府広報オンライン
総合支援資金
失業や収入減少などにより生活が厳しくなった世帯を対象に、生活の立て直しと自立を後押しするための貸付制度です。
各地域の社会福祉協議会が窓口となり、ハローワークなどの関係機関と連携しながら、生活再建に必要な資金を段階的に借りられます。
貸付のおもな内訳は、以下のとおりです。
| 内訳 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 生活支援費 | 生活再建までの生活費 | 月20万円以内(単身世帯は月15万円以内) |
| 住宅入居費 | 賃貸契約時の敷金・礼金など | 上限40万円 |
| 一時生活再建費 | 就職活動費用や公共料金の滞納解消など | 上限60万円 |
連帯保証人がいる場合は無利子、保証人なしでも年1.5%程度の低金利で利用できる点が特徴です。
ただし、低所得世帯であることや、継続的な自立支援を受けることに同意していることなど、複数の要件を満たす必要があります。
参考:生活にお困りで一時的に資金が必要なかたへ「生活福祉資金貸付制度」があります。|政府広報オンライン
臨時特例つなぎ資金貸付
失業などにより住居を失った、または失うおそれがある離職者を対象に、当面の生活費を一時的に支援する貸付制度です。
失業給付や住居確保給付金など、ほかの公的制度の給付開始までに生活費が不足する場合の「つなぎ」として利用されます。
貸付内容の概要は、以下のとおりです。
- 貸付上限額:10万円以内
- 利子:無利子
- 連帯保証人:不要
資金繰りに不安がある場合は、市区町村の社会福祉協議会に相談して利用可否を確認しましょう。
参考:生活にお困りで一時的に資金が必要なかたへ「生活福祉資金貸付制度」があります。|政府広報オンライン
まとめ:給料ファクタリングの実態は「貸付」
給料ファクタリングは「給与債権の売買」を謳っていますが、実態は貸付に近いスキームであり、利用には慎重な判断が求められます。
手数料が高額になりやすいことや、トラブルに発展する事例が報告されていることからも、安易な利用は避けたほうがよいでしょう。
事業資金の調達を検討している場合には、豊富な実績と信頼性を備えたファクタリング会社へ相談するのも1つの方法です。
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安全かつ納得感のある資金調達を実現するためにも、信頼できる専門会社への相談を前向きに検討してみてください。
