法人の資金調達を検討する際、コストやリスクをふまえた選択に悩む経営者は少なくありません。
手段は融資やファクタリング、出資、補助金など多岐にわたり、それぞれ特徴や注意点が大きく異なります。
本記事では、法人の資金調達方法を検討する際に押さえておきたい重要ポイントを、実務目線で分かりやすく解説します。
総合的な視点で判断する知識を身につけ、資金繰りや財務体質の改善を図りましょう。
監修者プロフィール
税理士法人浅野会計事務所は、愛知県清須市にあり、創業40年以上、経営・金融・税務・会計・労務のスペシャリストとして各種サポートを行っています。代表の浅野芳郎をはじめ、税理士4名、行政書士1名、社会保険労務士1名ほかファイナンシャルプランナー、宅建資格の資格保持者などもおり、長く経営するためのサポート体制を整えています。
法人の資金調達方法9選
資金調達にはさまざまな方法がありますが、手段によって調達金額や難易度、手続きなどが異なります。
企業における代表的な資金調達について、以下の9種類を詳しく見ていきましょう。
- 融資を受ける
- 社債を発行する
- ベンチャーデットを活用する
- 増資を受ける
- クラウドファンディングを利用する
- M&Aを検討する
- 固定資産を売却する
- 補助金・助成金を申請する
- ファクタリングを活用する
それぞれ解説します。
1. 融資を受ける
法人が資金調達を行う際、第一に検討されることが多い手段です。
銀行や信用金庫、政府系金融機関などから資金を借り入れる方法で、企業の信用力や業績、事業計画などをもとに審査が行われます。
おもなメリットは、以下のとおりです。
- 運転資金から設備投資まで幅広い用途に利用できる
- 比較的低金利でまとまった資金を確保できる
- 安定した売上を維持している企業であれば、好条件での借入が期待できる
一方で、赤字決算が続いている場合や財務基盤が弱い場合は、希望どおりの融資を受けられないケースも少なくありません。
着金までに一定の時間を要する点もふまえ、緊急度や自社の信用状況を考慮しながら、ほかの資金調達方法と比較検討しましょう。
日本政策金融公庫や信用保証協会の活用
日本政策金融公庫は、創業期の企業や中小企業に対し、比較的柔軟な審査基準で融資を行っているのが特徴です。
信用保証協会は、企業が融資を受ける際に信用保証を提供することで、金融機関側のリスクを軽減する役割を担っています。
いずれも、民間金融機関より審査のハードルが低い傾向にありますが、手続きに一定の時間を要することもあります。
資金調達の緊急度が高い場合は、ほかの選択肢もあわせて検討しましょう。
2. 社債を発行する
社債の発行は、法人が投資家から直接資金を調達できる代表的な手段の1つです。
企業が債券(社債)を発行し、購入した投資家に対して利息を支払い、償還日に元本を返済します。
金融機関からの借入とは異なり、市場や特定の投資家から資金を集められる点が特徴です。
社債を発行するおもなメリットは、以下のとおりです。
- まとまった長期資金を確保しやすい
- 出資ではないため、経営権の希薄化が起こらない
- 支払利息を損金算入できるため、税務面でのメリットが生じるケースもある
- 条件設計の自由度が比較的高く、資金使途や償還期間を自社の資金計画に合わせて設定しやすい
一方で、社債発行には一定以上の信用力や事業規模が求められます。
一般的には中堅企業以上、もしくは財務基盤が安定している法人に向いている資金調達方法といえるでしょう。
3. ベンチャーデットを活用する
スタートアップや成長企業向けに提供される、融資型の資金調達手法です。
通常は、金融機関やデットファンドが無担保・無保証に近い形で資金を貸し出し、信用補完として新株予約権などが付与されます。
出資と銀行融資の中間に位置づけられる手法として、近年注目が高まっています。
最大の特徴は、株式の大幅な希薄化を避けながら成長資金を確保できることです。
増資と異なり、経営権への影響を抑えつつ資金調達できるため、将来の上場や大型調達を見据える企業に適しています。
ただし、ベンチャーキャピタルからの出資実績や、今後の成長見込みがなければ利用が難しい場合もあります。
4. 増資を受ける
投資家から出資を受け、資本金や資本準備金を増やす資金調達方法です。
融資と異なり返済義務がないため、資金繰りの負担を抑えながら財務基盤を強化できます。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けることで、経営面の支援を受けられることもメリットです。
長期的な成長投資や新規事業の立ち上げなど、大きな資金を必要とする企業に適しています。
一方で、出資比率によっては投資家の経営関与が強まり、意思決定の自由度が下がる可能性もあります。
企業価値の算定や投資契約の交渉など、実行までの負担が大きい点にも注意が必要です。
5. クラウドファンディングを利用する
インターネット上でプロジェクト内容や資金使途を公開し、不特定多数の支援者から資金を募る調達方法です。
近年は、法人の新規事業や商品開発の資金源としても活用が広がっています。
クラウドファンディングには、以下のように複数の方式があります。
- 支援者に返礼品を提供する「購入型」
- リターンのない「寄付型」
- 株式・新株予約権などを提供する「投資型」など
ただし、必ず資金が集まる保証はなく、企画力や発信力に成果が大きく左右される点には注意が必要です。
魅力的なストーリー設計や適切なリターン設定、継続的な情報発信など、成功に向けた準備負担は決して小さくありません。
6. M&Aを検討する
M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の合併や買収、事業譲渡などを通じて経営権や事業を移転する手法です。
事業承継や成長戦略の文脈で語られることが多いものの、不採算部門や非中核事業を売却する手段としても活用できます。
ブランド力や人材、販路などの無形資産に価値が認められれば、赤字事業であっても資金化の余地があります。
一方で、M&Aはデューデリジェンスや契約交渉など複数のプロセスを経るため、即時の資金繰り改善には適しません。
7. 固定資産を売却する
法人が保有する土地・建物・設備などを現金化して資金を確保する、シンプルかつ即効性の高い資金調達方法です。
固定資産税や維持管理費、減価償却費の負担が軽減され、長期的なコスト削減や資本効率の向上も期待できます。
遊休資産や稼働率の低い設備を抱えている企業にとっては、有力な選択肢となるでしょう。
ただし、固定資産の売却は買い手が見つかって初めて成立するため、必ずしも短期間で現金化できるとは限りません。
不動産市況や設備の需要によっては、希望価格で売却できないケースもあるでしょう。
8. 補助金・助成金を申請する
国や地方自治体などの公的機関が企業支援を目的として交付する資金で、原則として返済不要で受け取れます。
負債を増やさずに資金を確保できるため、創業期から成長期、成熟期まで幅広い法人にとって有効な選択肢です。
おもな対象分野は、新製品開発・IT導入・設備投資・雇用拡大・省エネ対応など多岐にわたります。
まとまった金額の資金支援を受けられるほか、公的支援の採択実績は対外的な信用力向上につながる点も見逃せません。
ただし、補助金・助成金の多くは公募・審査制のため、精度の高い事業計画の作成が求められます。
9. ファクタリングを活用する
企業が保有する売掛債権(請求書)を専門業者に売却し、入金期日前に資金化する方法です。
売上の入金を待たずに現金を確保できるため、資金繰りの改善策として広く活用されています。
最大のメリットは、スピード感のある資金調達が可能なことです。
条件が整えば最短即日〜数日で入金されるケースもあり、急な支払い対応や運転資金の補填に向いています。
また、借入ではないため負債が増えず、金融機関の与信枠に影響しにくいことも特徴です。
銀行融資の審査を通過しにくい創業間もない企業や、赤字決算の企業でも利用できる可能性があります。
急な資金需要への対応や、つなぎ資金の確保を目的とする場合に、ほかの調達方法と併用しながら戦略的に活用するとよいでしょう。
2社間・3社間ファクタリングの違いと使い分け
ファクタリングには、おもに「2社間」と「3社間」の2種類があります。
2社間ファクタリングは、利用企業とファクタリング会社の2社のみで契約を行う方式です。
一方で、3社間ファクタリングは利用企業・ファクタリング会社・売掛先の3者で契約を締結します。
それぞれの特徴は、以下のとおりです。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| 2社間ファクタリング |
|
| 3社間ファクタリング |
|
取引先に知られず早期に資金調達したい場合は2社間、コストを抑えたい場合は3社間など、自社の状況に応じて使い分けましょう。
最短即日で資金調達が必要な場合の選択肢
一刻も早く現金を確保しなければならない場合は、審査スピードや入金までのリードタイムを重視して資金調達手段を選びましょう。
最短で資金化が可能な選択肢について、特徴やメリット・デメリットを紹介します。
- 即日入金に対応した民間ファクタリング
- ビジネスローンの活用と注意点
それぞれ見ていきましょう。
即日入金に対応した民間ファクタリング
民間のファクタリング会社が提供するサービスの中には、最短即日での資金化に対応しているものがあります。
とくに2社間ファクタリングでは、オンラインで契約まで完結するサービスも増えており、スピーディに手続きが進みます。
急な仕入れや給与支払いなど、緊急性の高い資金ニーズに対応しやすい点がメリットです。
ただし、手数料の分だけ利益が目減りすることを考慮しなければなりません。
また、売掛金の範囲内でしか資金調達できない点にも注意が必要です。
ビジネスローンの活用と注意点
ノンバンク系の金融機関が提供するビジネスローンは、最短即日〜数日で融資が実行される場合もあります。
審査が比較的柔軟で、銀行融資を断られてしまった企業でも利用できる可能性があるでしょう。
一方、金利は高めに設定される傾向で、返済負担が大きくなりやすい点には注意が必要です。
また、短期的な資金繰りは改善できても、長期的には利息の返済によってキャッシュフローが悪化するリスクもあります。
利用する際は、返済計画を十分に立てたうえで必要最小限の借入にとどめることが大切です。
法人の資金調達方法を検討する際のポイント
法人が資金調達方法を検討する際は、経営への負担を考慮する必要があります。
とくに重点的に比較すべきポイントは、以下のとおりです。
- 資金調達にどれくらいのコストがかかるか
- 確実に返済できるか
- 決算書へどのような影響があるか
- 準備の負担を許容できるか
- 個人保証なしで活用できるか
- 調達までのスピード(リードタイム)の比較
- 資金使途の制限があるか(運転資金・設備資金)
詳細を見ていきましょう。
資金調達にどれくらいのコストがかかるか
資金調達手段ごとに、コスト構造は大きく異なります。
表面上有利に見えても、実質負担が重くなるケースは少なくありません。
たとえば、融資であれば金利や保証料、クラウドファンディングではプラットフォーム手数料や返礼品コストが発生します。
増資の場合は返済不要ですが、将来的な配当負担や持株比率の低下などの目に見えないコストが生じます。
資金調達後の利益率やキャッシュフローに無理が生じないかをシミュレーションし、自社の収益構造に見合った方法を選択しましょう。
確実に返済できるか
融資や社債などのデットファイナンスでは、元本返済と利息の支払いが契約で固定されます。
たとえ業績が一時的に悪化しても、返済は原則として免除されません。
キャッシュフローに余裕がない状態で利用すると、資金繰りをさらに圧迫するリスクがあります。
返済原資をどこから確保するのか、最悪の売上シナリオでも支払いを継続できるかまで試算しておくことが大切です。
一方、増資などのエクイティファイナンスは返済義務がないため、資金繰りの柔軟性を確保しやすいでしょう。
ただし、株式の希薄化や経営への関与など別の影響が生じるため、単純に「返さなくてよいから有利」とは限りません。
自社の成長フェーズとキャッシュ創出力に見合った返済負担かどうか、慎重に検討しましょう。
決算書へどのような影響があるか
資金調達手段によって決算書の見え方が大きく変わるため、将来的な信用力への影響も考慮する必要があります。
たとえば、融資や社債などは負債として計上され、借入残高が増えるほど自己資本比率が低下します。
自己資本比率の悪化は、金融機関の与信判断や格付け評価に影響を与え、将来的な追加融資を困難にしかねません。
すでに借入依存度が高い企業では、資金調達余力を慎重に見極めることが大切です。
準備の負担を許容できるか
必要資金の多寡だけでなく、申請までに要する準備負担を現実的に受け入れられるかどうかを見極めましょう。
調達方法によって、求められる書類の量や審査の厳しさ、資金化までの期間が大きく異なるためです。
たとえば銀行融資では、決算書や資金繰り表、事業計画書など、多岐にわたる書類提出と詳細な説明が求められます。
内容の精度も重視されるため、準備や修正対応に相応の時間と人手が必要になるケースが少なくありません。
一方で、ファクタリングや一部のオンライン型資金調達は、提出書類が比較的シンプルで、審査から入金までが短期間で完結します。
一定の手数料が発生するものの、早期の資金化を優先することで資金繰りの安定を図れる場合もあるでしょう。
自社の体制や資金ニーズの緊急度をふまえ、無理のない手段を選択することが大切です。
個人保証なしで活用できるか
「経営者個人がどこまで責任を負うのか」という観点も重要です。
代表者の連帯保証が求められるケースでは、万が一返済不能に陥ると個人資産にまで影響が及ぶ可能性もあります。
近年は「経営者保証ガイドライン」の普及により、一定の条件を満たせば個人保証なしで融資を受けられる可能性が広がってきました。
以下のような条件を満たしていれば、新規融資時だけでなく、既存借入の保証解除を交渉できる余地もあります。
- 法人と経営者の資産・経理が明確に分離されている
- 法人単体で返済可能と判断できる財務基盤がある
- 財務情報の透明性が確保されているなど
なお、ファクタリングや補助金、出資などの手段は、原則として経営者の個人保証を必要としません。
経営者のリスクを抑えたい場合には、候補の1つとして検討するとよいでしょう。
調達までのスピード(リードタイム)の比較
同じ調達額であっても、入金までのスピードが異なれば、資金繰りへの影響は大きく変わります。
一般的に、銀行融資や社債発行、増資などは、資金化まで数週間〜数ヶ月かかります。
とくに、事業計画の精査や条件交渉が必要な場合は時間がかかりやすいため、余裕を持ったスケジュール管理が欠かせません。
一方で、ファクタリングやビジネスローンなどは、比較的短期間で資金調達が可能です。
サービスによっては即日〜数日で入金されることもあり、急な支払い対応や一時的な資金不足の解消に適しています。
時間に余裕がある場合は低コストな手段を、緊急性が高い場合はスピードを優先した手段を検討しましょう。
資金使途の制限があるか(運転資金・設備資金)
銀行融資は資金の用途が明確に区分されており、申請時に提出した目的以外への流用は原則として認められません。
補助金・助成金についても、制度ごとに対象となる経費が細かく定められており、条件に合致しなければ支給対象外となります。
一方で、ファクタリングや一部のビジネスローン、増資などは比較的資金使途の自由度が高い傾向です。
とくに運転資金としての利用を想定している場合は、使途制限の有無を入念に確認する必要があります。
企業の成長フェーズに合わせた最適な調達手段の選び方
資金調達は「どの方法が優れているか」ではなく、自社の成長フェーズに適しているかで選びましょう。
企業は、創業期・成長期・成熟期と段階ごとに財務状況や資金ニーズが大きく異なるためです。
各フェーズに適した資金調達手段をまとめました。
| フェーズ | 企業の状況 | 向いている資金調達手段 |
|---|---|---|
| 創業期 | 実績や信用力が不十分なため、銀行融資を利用しにくい |
|
| 成長期 | 売上拡大に伴い、運転資金や設備投資の需要が増加する |
|
| 成熟期 | 安定した収益基盤を背景に、より低コストな資金調達が可能になる |
|
現在のフェーズだけでなく、将来の成長戦略や資本政策まで見据えて手段を選択することが大切です。
中長期的な視点で最適な組み合わせを検討し、持続的な企業成長につなげましょう。
まとめ:法人の資金調達は戦略的な判断が必要
法人の資金調達手段は、コストの妥当性、返済の確実性、決算書への影響など、複数の観点から総合的に判断することが大切です。
自社の財務状況や成長フェーズに合わない手段を選んでしまうと、かえって資金繰りや経営の柔軟性を損なうリスクもあります。
必要に応じて複数の手段を比較し、自社にとって最適な選択を行う視点が欠かせません。
資金調達の方法選びに不安がある場合は、専門家への相談も検討しましょう。
株式会社JTCは、10年以上の業歴で培った高い信頼と豊富な実績が強みのファクタリング会社です。
自社の将来を見据えた戦略的な資金調達を実現するためにも、信頼できるパートナーとともに最適な一手を検討してみてはいかがでしょうか。
